第15話

気がつくと、研究室の天井が見えた。父が顔を覗きこんでいる。


「大変な目に遭ったね」


体は綺麗に直っている。頭がショートする寸前、恐ろしいことを考えたことを思い出した。私は起き上がった。


「美砂は。美砂は大丈夫ですか。酷く興奮していて」


「3型が君たちの間に割って入って、葛本君に鎮静剤を打ったらしい」


「じゃあ美砂は無事なのですね」 


父は安堵したように微笑んだ。


「真っ先に友達の心配をするのだね。無事じゃなかったのはカナデのほうだろう。でも大丈夫だ。カナデは葛本君に傷ひとつつけていない」


「……攻撃されている間、いろいろな選択肢が頭を駆け巡りました。全てに警告音が鳴るのです。でも」


私は言葉を切った。


「でも、殺すと考えた瞬間、それが鳴りやみました……」


父はゆっくりと頷き、溜息をついた。


「カナデは欠陥じゃない。よくない言い方かもしれないがね、欠陥があったのは、本物のほうなんだよ」


私は父を見上げ、どういうことかと訊ねた。


リビングに行くよう促されたのでそうすることにした。


父はコーヒーを淹れると、自分の書斎から一冊のノートを持ってきた。


「奏が生前に書いたものだよ。部屋に保管してあった。私がそれを見つけたのは、爆発のあとだ……」


私はノートを広げた。奏の直筆と思われる文章が並んでいる。

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