第2話 「本日より配属になりました。橘亜沙子です。よろしくお願い致します。」
何だかんだで1年アメリカの訓練所で過ごした私はフランスで大学に戻る事が出来た。
その後は、オッサンに偶に呼ばれて通訳したり、エキストラみたいに現場をウロウロしたり、運び屋のまね事みたいなことしたりしてた。
ほとんど危険はなかったし実入りも良かったから、良いアルバイトだと思って過ごしてたんだ。
1年遅れで大学も卒業するって時期になって、これからどうしようって事になって考えた。
それをオッサンに言ったら、「バイトじゃなくてウチに来い」って言われた。
そんなイリーガルな所に就職するのはちょっと…って言ったら爆笑された。
何を今更って事らしいけど、流石に親に留学費用も出してもらって、1年留年したりしたので安心させてやりたいし、あんまり連絡もしてないから。
でもオッサンは呆れて言った。
「言っとくけどウチはちゃんとした企業活動してるからな。」
「どの顔で言ってんの?」
「ん?言ってなかったか?日本でも民間警備会社として上場してるぞ?」
「は?」
「もし、日本に戻るならソコ紹介してやるよ。でも、お前はこっちで働いてくれると思ってたんだけどな。」
確かにオッサンのおかげで生活は楽になったし、このままフランスでの生活を続けるのも良いとは思うけど、色々とこの5年間経験して自分の甘さとか独りよがりな所とかちゃんと向き合えたし、今なら日本に戻っても何とかやっていけると思った。
「ちゃんと日本に戻るよ。」
「そうか、なら日本に連絡しておいてやる。連絡先はちゃんと残しておけよ。」
「いらないよ、普通に就職するから。」
「流石に無理だと思うぞ。今からだと。」
「え?」
「お前、ホントに日本の事には疎いんだな。もう今からだと就職活動なんて終わってるぞ。海外からの帰国子女枠とか狙うつもりか?」
「マジで?」
「別にウチに来たからって、日本に帰っていきなり現場の仕事にはならんから安心しろ。」
「ふーん。まあ、帰ってから考える。」
「アサコらしいな。まぁ、困ったら連絡しろ。」
そういって何処からか出してきた名刺?ぽいのを渡してきた。
ふーん、一応役職あるんだね。てか、この名前、本物?肩書とか統括部長とかなってて笑えるんだけど。
「本物だぞ、無くすなよ。」
「覚えたから要らない。」
「そういうのは日本の社会人ではあり得ないからな。(笑) いつ帰るんだ?見送りは行けないが航空券位は用意してやるぞ。」
「助かる。」
「またな。今度は日本で寿司でも食おう。」
「ん。」
それでフランスでの大学生活も終わり、日本にすんなり帰ってくることが出来た。
帰りの飛行機がビジネスクラスだったのはビビった。
自分の部屋のソファより居心地良いってどういう事よ?
5年ぶりの日本は大して変わって居なかった。
ゴミゴミした雰囲気で電車はギュウギュウ詰めで、街はセカセカしてて、あー日本てこんな感じって思った。
5年ぶりに実家に帰り、お父さんとお母さんはちょっと安心してくれた感じで、その顔を見れただけでも帰ってきて良かったと思う。
就職についてはオッサンと同じことを真顔で言われた。
本当なら最低でも半年前に書類を送ったりWebで応募したりとかするらしい。
「まぁ、ゆっくり探せば良いさ。アサコはフランス語が出来るんだからそれを活かしても良いしな。」
お父さん、私の事信頼してくれているみたいで涙が出そう。お母さんもゆっくりしなさいって言ってたし。
日本の社会の事、もう少し勉強してからにしようかな?と気楽に考えてた時期もありました。
郵便がが届くまでは…
「アサコー、郵便届いてるわよ。」
「え?私宛?誰から?」
「分からない、会社名が『KS警備保障株式会社』って書いてある。」
「んー?何だろう。知らない会社…でも無いや。フランスにもあった。」
「あー、確か日本でも世界に通じる民間警備会社ってこの前テレビでもやってたわ。」
「ふーん。」
「何か就職関連資料って書いてあるわよ。いつ資料請求なんてしたの?」
「え?私してないよ。」
あ、オッサンか?確か名刺の名前それだった。
「もしかしたらフランスで世話になった人の会社かも。日本に帰るって伝えたから気を利かせてくれたのかな。」
「あら、そうなの?ちゃんとお礼言っときなさいよ。」
「ん。」
ホントだ、就職関連資料って書いてある。
オッサンも気が利くな。
特に、オカシなモノは入ってないみたいだし普通の郵便ぽいな。
さて、何が入っているのかな?
『入社時のご案内』
ん?どゆこと???
中に入ってる資料を読んでみた事をまとめてみた。
・KS警備保障株式会社への入社おめでとうございます。
・入社式からオリエンテーションの日程。
・提出書類一式。。
何か知らんけど就職が決まっていた。
特に、最後の一枚『配属先に関わらず、警護部への出頭を命ず。』だって。
おい、オッサン、どういう事やねん?
お父さんとお母さんに言ったら、
「『KS警備保障株式会社』は一部上場企業だぞ。
そんな所に入社できるってお前はフランスで何をしていたんだ?」って不思議がられた。
既に用意されていた設定で
「フランスで仕事をするにあたって会社が通訳を探しててそこで非常勤で通訳をしていた」
って言うのを初めて使った。
日本でそんなに大きな会社とは知らなかった(本音)。
そこの会社に日本に帰る事は伝えていたので気を利かせてくれたのか?等とかなり怪しい言い訳を並べてみた。
その夜、オッサンには長文で苦情のメッセージを送っておいた。
ついでに日本での携帯連絡先とメールアドレスをつけておいた。
返信はすぐ来た。
『警護部の犬塚部長に会いに行け。俺の代わりに寿司奢ってくれる。』だとさ。
帰ってきて1ケ月も経たずに就職が決まりました。
希望したかどうかは関係ないけどね。
あわただしく書類の提出、引越等の手配をして、もう入社式の日になってしまった。
全然、実感湧かないけどね。
ま、今回は国内だし、いつでも実家には帰ってこれるし、どんな会社なんだろうな。
楽しみだなぁ。
そう思っていた時期がありました…
入社式で本社に行くって珍しいなってお父さん言ってたけどその通りだった。
新入社員、私含めて5人しかいないよ、この部屋。
しかも、すごいエリートっぽい人達ばかりで怖いんだけど。
同期200人入社って聞いてたから気楽に考えてたのに。
え?他の人は別の場所で入社式?そのまま、研修?本社に呼ばれたのは何?
ここに居るメンバーは研修は配属先で行うんだって、内勤って事かな?
え?私、警護部?花形部署じゃないんですか?他のメンバーが睨んでますけど良いんですか?
あ、もう終わりですね。
ホッとしたのもつかの間、それぞれの部署に挨拶に行くと…承知しました。
案内してくれる警護部の先輩、竹原さん、メッチャ美人!
でも…多分かなり強い。そうは見えないけど、握手した時にゾクッとした。
警護部の本部に行く時、結構厳重なセキュリティゲートとか有ったんだけどチェック厳重過ぎん?
本部に入って、配属の挨拶をしたけどめっちゃ緊張した。かなりのピリピリ感。
「本日より配属になりました。橘亜沙子です。よろしくお願い致します。」
みんな笑顔で迎えてくれて、ちょっとホッとした。
「今、本部に居るのはほんの一部で実際はもっと沢山いるから、おいおい紹介していくね」との事。
あー良かった。普通の会社っぽいね。安心したよ。
でも、山場はソコじゃなかった。
「こちらが部長室です。どうぞ。」
「本日より配属になりました。橘亜沙子です。よろしくお願い致します。」
「警護部長の犬塚だ。鷲尾から話は聞いてる。寿司食わしてやるからその分働けよ。」
オッサンと同類のヤバいやつがそこに居た。
アデュー、私の平穏な日々。
橘 亜沙子(タチバナ アサコ)(女)(23歳)
主人公 フランスに留学中に組織に拉致られアメリカの訓練所で戦闘訓練を1年間みっちり受けた準工作員的なポジションにいるが、本人は至ってコスパの良いバイトレベルの感覚。
日本の事にあまり興味が無かった事もありかなり世間に疎い様子。
このままではプータローまっしぐらだったが、オッサンのおかげで無事就職決定。
良かったかどうかは神のみぞ知る。
橘 圭吾(タチバナ ケイゴ)(男)(50歳)
主人公の父 放任主義ではないが、子供にはあまり過度に干渉し過ぎないようにしている。周囲の方がアサコの事を心配しているようだが、自分の娘を信じており、何とかすると謎の信頼を寄せている。就職浪人する事も特に気にしていなかったが、せっかく留学から帰ってきたのにすぐに就職でまた地元を離れる事になってしまい少し寂しいと感じている。
橘 亜由美(タチバナ アユミ)(女)(49歳)
主人公の母 夫と同様に娘を信じているが相変わらず世間知らずな事にちょっと不安を感じている。フランスでの人脈を作っている事にちょっと見直している。
同期入社の皆様
そんなにこの後出てこない予定。大学や大学院で安全保障や法律を専門分野とするエリートさん達。本社で経営部門に携わる人材として現場の方々とは別で採用された。
アサコとは別のセレクションを経てこのポジションに居る方々。とても優秀(のはず)。
竹原さん(女)(年齢非公表)
警護部のスタッフでとても美人、でもアサコでも感じ取れるレベルの実力があるらしい。
オッサンその1(男)(40代後半)
『KS警備保障株式会社』 欧米支局 統括部長 『鷲尾』さん
アメリカとヨーロッパをエリアに非合法活動等に従事しているが、表の顔もあり欧米エリアの統括部長。恐らく偉い。
せっかく拾った使い勝手の良い駒を確保する為にアサコの就職をねじ込んだ。
この一手は吉と出るか凶と出るか。
オッサンその2(男)(40代後半)
『KS警備保障株式会社』 本社 警備部長 『犬塚』さん
アサコの就職をねじ込まれた人。『鷲尾』と長年の盟友であり、そのスカウト能力には信頼を置いているので二つ返事でアサコを入社させた。
『鷲尾』からの「面白いやつを送るから楽しみにしておけ」にワクワクしている。
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