第7話 フォークとWANTED

『WANTED ‘‘通り魔’’×××× 生死問わず 報奨金300万マル』

 城下第7ノモス。フォークを持った修羅、シュリ・ゲーゲンベルクはある一枚のポスターの前に立っていた。かつては死に物狂いで街中探したWANTEDのポスター。それを、彼は何の感情もない目で見やる。当時は、それが彼にとっての縋る藁だった。それで助けられると思っていた。しかし、それは今では意味を失ったただの風にはためく紙である。以前であれば、妹のためにカネを稼ぐという目的であっても、その犯罪者を捕まえることによって誰かが救われるのだろうか、と思わないこともなかった。しかし、今の彼はそんなことを思うこともなかった。

 オレの一年は何だったのか、皮肉なものだ、とシュリは思いを巡らせる。妹を助けるために賞金首を狩って、その妹は、このWANTEDのポスターに載っているかもしれない誰かに殺された。自分の狩った賞金首は自分で言うのは何だがかなりの量だったはずだ。それなのに、故郷の人々、そして何より自分の妹と親友を殺した犯人を事前に捕まえることはできなかった。バチが当たったのかもしれない、という考えがふと心を過ぎる。賞金稼ぎバウンティハンターは、WANTEDになった犯罪者を捕まえ、その懸賞金を稼ぐ。当然、その捕まった賞金首たちは裁かれる。打首となった者もいるだろう。そう、賞金首は、本物の人間を売って暮らすようなものだ。奴隷商人とやっていることは同じだ。だから、よく思われない稼ぎ方なのだ。そんなことは分かっていた。それでもオレは、周囲の反対を押し切って賞金稼ぎバウンティハンターになった。外道に堕ちたのだ。だから、そのバチでラミが、カイが死んだのかもしれない。

でも、と自分の中に浮かんだ弱気な考えをシュリは打ち消す。そいつらは自業自得だ。罪を犯して罪のない誰かを脅かしたんだ。命さえ奪ったかもしれない。それか、死よりも大きな苦しみの海に放り込んだかもしれないんだ。だから、命を以て償うことになっても、自分の知ったことではない。

 シュリは、WANTEDのポスターに背を向けた。懐で妹のために稼いだカネがじゃらり、と音を立てる。虚しい。これから自分は犯人の息を止め、自分の命も棄てるまで妹のためのカネで生きていくのだろう。カネさえあればなんとかなると思っていた。いつか自分の努力が報われると信じていた。でもカネや善意で解決できることばかりではなかった。世の中は、それをも上回る悪意で溢れている。悪意は、人知れず蔓延り、廻る。

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