第3話 噂の一人歩き?

ユーリは今日は珍しく同室の者と寝る前の話に勤しんでいた。いつもは相槌が殆どなのだが。始まりは同室の男ヤブの言葉だった。


「先輩にリクって人がいるだろ?」

「ああ、あの人ね。いつも野外訓練で首位を取ってる人。」


反応した男はダンテだった。ヤブは小柄で細身だったが、綺麗な黒髪で目までかかった陰気な雰囲気があった。それに対してダンテは長身でガタイが良く、金色の短髪で、元気そうな男である。


「リク先輩でしょ?俺いつも組まされてる。」


突然、いつもは殆ど参加しないユーリが会話に入ってきたのだから、ヤブとダンテはびっくりした様な顔をする。それからお互い顔を見合わせて笑った。


「なんで笑うんだよ」


ユーリがいかにも不満ですという顔をすると、彼らは「ごめんって」といい両手を合わせた。


「確かにいつもユリアスってリク先輩と組まされてるよなぁ」


ダンテがそう言う。


「で、そのリク先輩なんだけど、入軍した時不思議な志望動機だったらしいよ。」

「どんな?」


ユーリが聞くとヤブは二カリと笑いこう言った。


「復讐なんだってさ。」

「はあ、それまたなんでさ?」

「故郷消えちゃったらしいよ。戦争で。ずっと昔にね。」

「それなのに戦争を起こす軍に入ったの?」

「敵公に銃とかぶっ放したいんじゃない?」

「先輩ってそんな性格だったけ?」


ユーリは自分が疑問に思った事をスラリと口に出す。ヤブは苦笑いしてから、「知らねー」と言った。


「でも、昔はもうちょっと黙りな人だったらしいし、簡単な事で笑う様な人じゃなかったみたいだけどな。個室の件はなんか集団部屋で苦情が多発したかららしいけど。」

「苦情って」


クククッと笑ってダンテが繰り返し言う。


「なんかあの人、ほかの噂も回ってるみたいだし。」

「なんの?」


ユーリが聞く。


「元殺し屋って話らしいよ。まあ、あの先輩めっちゃ強いからそういう噂が独り歩きしてるだけだろうけど。噂はつきものなんだよ。簡単に信じるものじゃないよ。」

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