雪女の花嫁

星月小夜歌

序章 藤森明里という少女

 幼いころから、私……藤森明里ふじもりあかりは、他の人には見えなかったり聞こえなかったり感じすらもしなかったりするものを当たり前に見たり聞いたり感じたりしていた。

 保育園の頃はおばあちゃんやおじいちゃんが、明里には妖怪が見えるのかと私のことを信じてくれていた。

 しかし私が中学生になる頃にはおじいちゃんもおばあちゃんも亡くなってしまい、私の感じるものを信じてくれる人は一人もいなくなってしまった。

 おじいちゃんとおばあちゃんが亡くなってから、家の中で奇妙な気配を私だけ感じたり、私にだけ物音が聞こえたりと、不思議なことはよく起きるようになった。

 家族はみんな気味悪がっているが、私だけは恐怖や気味の悪さなんて感じることはなく、むしろなんだか心強くも感じていた。

 どうせ信じてなんかもらえないので誰にも言ってはいないけれど、おじいちゃんとおばあちゃんが『明里を見守っているよ』と知らせるためにこんなポルターガイスト現象を起こしているのだと思っている。

 そして今。

 中学校では絶賛、気味悪がられている。

 小学校低学年くらいまでは、友達から不思議ちゃん呼ばわりされるくらいで済んでいた。

 小学校高学年の時点でやっと、自分はみんなとは違うこと、自分の言動は周囲から気味悪がられていることに気づいた。

 しかしもはや手遅れで、その年頃の女子なんて、ちょっとでも変な子がいればすぐいじめや仲間外れの標的にするものである。

 そしてさらに悪いことに、私の住む町は閉鎖的な田舎である。

 山奥の観光地。

 夏は涼しいキャンプ場、冬はスキー場で稼ぐような土地である。

 都会から観光客やスキーヤーにボーダーが来てお金を落としていく。

 それである程度は潤っていたがそれは少し過去の話。

 たちの悪い感染症が世界中で大流行して以降は市の税収がガクンと落ちたらしく、暖房代や電気代を節約するようにと学校で先生達に厳しく言われるようになってしまった。

 私の両親も夏はキャンプ場、冬はスキー場で働いていて、こんな状況じゃ商売あがったりとにかくお金が不安だから節約してくれと、まあその頃は学校も家もぴりぴりしていた。

 感染症が落ち着いた今はようやく観光客が少しずつ戻りつつある。

 けれど日本人より外国人がよく来るようになって、英語の看板とかを整備したいけどお金がない(ってお父さんが言ってた)。

 日本のスキー場は何気に人気らしく、もしかしたらそのうち外国人観光客がもっと増えて大儲け出来るかも(ってお母さんが言ってた)。

 話が随分逸れた。

 私の住む町はそのような土地柄であるから人口も多くない。

 小学校も中学校も1校だけで、人間関係は9年間ほとんど変わることはない。

 そんな町で変わり者扱いされたらどうなるか、なんて聞くまでもないだろう。

 中学2年生の今、私は友達からも先生からも、どことなく距離を置かれているのである。

 孤独や仲間外れなど慣れたもの、そしていじめもそれほどひどいものでは無かった。

(一時期には確かにあったもののよくわからない間に沈静化していった。後々話を聞くと私をいじめた生徒が立て続けに体調を崩したり怪我をしたりで、どうやら私をいじめると悪いことが起きるみたいなことになっているらしい。……そうなると流石に私も少し怖い。)

 ということで変人扱いはされているものの中学校には通えている。

 だがしかし。

 この冬に起きた事件が、私の道行きを大きく変えることとなる。

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