【家族】下戸なのにお酒を飲みたがる姉
なにかと予定が狂うときがある。というか予定通りに進むことがないのが毎日というものだ。部屋の扉の下にあるわずかな隙間が冷たい空気や廊下に設置されている足元の常夜灯の光を部屋の中へ送り込む。それが嫌で、小さな毛布でその隙間を埋めて寝るようにしている。今朝、目覚ましの前に扉をノックする音がする。扉が開かれる。姉が立っている。なにかあったのかと思い、片方だけ耳栓を外す。
「ついになっちゃったよ……」
その言葉になんとなく察した。おそらく、姉が前から気にかけていた選手が戦力外になったのだろうと思った。結果はそのとおりだったのだが、それで部屋の扉を開けられるのは困る。扉は開閉されるが、毛布はそれに合わせて戻ってはくれない。目覚ましの前に布団から身体を起こす。扉の前に毛布をセットし直す。今夜からは寝る前に部屋の鍵を閉めようか。そんなことを考えた朝だ。
やりたいことがあって前日にある程度次の日の計画を立てるけれど、そのとおりに一日が進むことはほぼない。今日も今日とて午前の予定が狂って明日に持ち越しだの、明日で埋め合わせだの、そんなことを計画し直している。まあ、仕方ない。それが毎日、それが積み重なっての人生だ。
話は変わって、今朝鏡を見たらとんでもなく顔が浮腫んでいる自分がいた。母が作ってくれたたくさんの美味しい料理に加えて、お酒を飲んだからだろう。基本的にお酒は飲まない。飲むとしても年に片手に収まる程度の回数ほどだ。昨日はお酒が飲めないのに気になるお酒をつい買ってしまう姉に付き合った形だ。300ミリリットルほどの缶の中身の三分の一をグラスに注いでもらう。先陣を切ってひと口飲んでみる。
「あ、美味しい。これはほぼジュースだよ。味のついた炭酸水だ。甘くないし、だいぶ飲みやすいよ」
実際それはアルコール3%ほどのもので、お酒らしい味がほとんどしなかった。味の濃い晩ご飯との合間に喉をすっきりさせるにはぴったりの味わいだった。晩ご飯を食べ終え、グラスのお酒も綺麗に飲み干す。隣を見る。姉の缶の中のアルコールがほとんど減っていない。
「だめだ、これ。日本酒みたいな味がする!」
「美味しいって言ってたよね? まだ飲める? 飲んで?」
姉はそんな言葉を繰り返し、結局私は缶の三分の二くらいのお酒を飲んだ。
自分のいいなと思うところは、お酒が好きじゃないけどそれなりに強いところと、たとえ酔っても明るくなるだけなところだ。ただ、本当にお酒が好きではないのだ。
「飲めないんだったらもうお酒を買うな。どうせ飲まないんだから。私が飲む羽目になるんだから。いい加減学んでくれ、自分は飲めないと」
「……嫌だ!」
──さて、この頑なな姉をどうしたものか。残念ながら冷蔵庫にはまだもう一本姉が飲みたいお酒が入っている。そういえば別の場所にはワインもあっただろうか。その存在を今ふと思い出した。
おそらく姉は、自分も美味しく飲むことができるお酒との出会いを待っているのだろう。きっとその出会いがあるまで私は飲酒に付き合わされるのだと思う。まあ、本当に嫌だったら全力で拒否するから、なんだかんだで自分もこの感じを楽しんでいるのかもしれない。ただ、これも今年いっぱいだ。来年からは完全にアルコール断ちをしようと考えている。
と、そんなふうに書き記したそばからインターネット検索のおすすめに何故か「ほろよい 冬季限定 シャインマスカット」という記事が上がっている。こんなの姉が買わないわけがない。まあ、いい。今年いっぱいは付き合おう。
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