第19話 種明かし
「そっか、仲直り出来たんだね。良かった良かった」
「今日もあいつはデートだとよ」
星野の痴話喧嘩騒動から一日挟んだ水曜日の帰り道。
隣を歩く氷川にも、無事に解決したことを伝える。
「急に恋愛相談なんて言われたときは、どうしようかと思ったよ」
「にしては、恋愛上級者みたいなアドバイスだったぞ」
「ふふっ、そう? 私は感じたことを言っただけだよ」
相談した次の日には、もう仲直りしてたもんだから驚きだ。
一ヶ月続いた喧嘩がたった一日で解決したってことは、よほど的確なアドバイスだったんだろう。
「そういえば……こんなこと聞くのもあれだけど、氷川にも気になる男子なんていたんだな」
あの日、俺にとって一番の衝撃的な言葉。
────気になってる男子はいるけどね。
あのときの言葉がずっと頭に残っている。
「あ~、あれね。すごい驚きようだったね?」
「なんていうか、意外だったっていうか……」
「そう? 私にも気になる人くらいはいるよ」
そんな氷川の言葉を聞くと、自分でもよく分からない複雑な気持ちになった。
「氷川が興味を持つなんて、どんなやつなんだ?」
「えっ? ……あぁ、そういうこと。んーとね、面白い人かな」
「面白い……?」
「うん。普段はちょっと無愛想だったり口が悪かったりするけど、私には優しくしてくれるし」
楽しそうに笑って話す氷川を見て、何故だかこれ以上は聞かなくてもいいかなと思ってしまった。
俺は、それを悟られないように笑顔を作る。
「へぇ、いいやつなんだな」
「はぁ……自覚無しか~」
すると表情は一変、急にため息をついて訳の分からないことを言い出す氷川。
「はい……?」
「キミのことなんだけどなぁ」
「お、俺っ!?」
突然の暴露に、心臓が跳び跳ねる。氷川の顔には、呆れと同時にイタズラっぽい笑みが浮かんでいた。
────氷川の気になってる人が俺……。
「こんな私とここまで関わってくれるんだから、どんな人かなって気になるに決まってるでしょ」
「そうか、俺を……。っていうか、気になるってそういう……」
「なに? 気になる男子って、好きな男子のことだと思った?」
「なっ! ち、ちげぇよ……」
「あははははっ。分かりやすいなぁ、前田くんは」
からかうように笑う氷川。俺は熱くなってきた顔を隠すように背ける。
種明かしをされてから、どこか心の奥で安心してる自分がいた。
「ねぇ、前田くん。この機会だしさ、連絡先交換しない?」
また、俺の心を乱すような発言をしてきやがって……。
女子となんて交換したことないし、そもそも家族の他には星野と二階堂しか登録されてない。
「別に良いけど。急になんだよ」
「これだけ話してるのに、実は知らなかったなって思って。この間、あかねちゃんとやり取りしてるときに気づいたんだよね」
「あかねと交換してたのか!?」
「うん、お家にお邪魔したときに」
いつの間にそんなことを……。あいつ、少し目を離したらすぐこれだ。
呆れはするけど、あかねのことはひとまず置いておこう。
俺はスマホを取り出すと、氷川のスマホの画面に映し出されたQRコードを読み取る。
「これでオッケーだね。私の連絡先、この学校の人は誰も知らないから。秘密だよ?」
「お、おう。気を付けるよ」
────この学校の誰も知らない。
そんなことを告げられると、俺の心臓がうるさく鼓動を打つ。
登録人数六人────俺のメッセージアプリに、氷川の名前と猫の写真のアイコンが追加された。
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