第39話
反橋を渡り公園に向かうため歩いていると、長い列になり歩いていく行列を見かけた。
前の方には白無垢の花嫁姿が見える。
「あれは?」
「結婚式だね」
僕も実際に白無垢を見るのは初めてだ。
「白無垢に身を包んでいるのが花嫁さんだね、隣の袴姿が新郎かな」
うん、と頷いて説明しているとマリーベルはジッと行列が通り過ぎるのを眺めていた。
「花嫁さん……」
ポツリとマリーベルが呟いた言葉は僕の耳に届かなかった。
神社を出て大きな公園に向かう。
松の木がそこかしこにある公園はかなり広い。
最寄りの駅に近い場所に僕の目的の店がある。
「立葵が見事だな」
来る夏を思わせる背の高い立葵を見ながら目的の店に入る。
「ベル、席を取ってもらっていいかな?」
「はい」
空いた店内を見渡し店員さんが「お好きな席にどうぞ」という言葉に甘えてマリーベルに席を取ってもらう。
立葵が見える窓際の席に座ったのを見て僕はカウンターへ向かった。
同じものを二つ注文して席に向かう。
「何を頼んだのですか?」
「ん、来てからのお楽しみ」
僕がそう小さく笑うとマリーベルは一瞬だけキョトンと目を見開いてフフと小さく笑った。
電子音に呼ばれてカウンターに向かう。
少々重いトレイを二つ受け取り席へと戻った。
「こうやって自分で焼きながら食べるんだよ」
焼けた石の入った焜炉に串に刺さった団子を並べる。
僕を真似ながらマリーベルも団子を焼き始めた。
「これは黒蜜かな、こっちはみたらしだね」
「黒蜜にはきな粉でしょうか、豪華ですね」
多種ある味付けにマリーベルが手を合わせて喜色を浮かべる。
お冷を飲みながら外の景色に目を移し、マリーベルが目を細めた。
「色々あるみたいだし、後で駅ビルにも行ってみる?」
「ビルも良いですがもう少し公園を歩いてみたいです」
後のスケジュールを話しているうちに団子がこんがりと焼き目を付けていた。
「まずは、みたらしから」
「私は黒蜜だけを」
最初の一本を味わう。
柔らかな団子に甘塩っぱいみたらしが絡んでトロンと舌の上に溶ける。
香ばしさが鼻に抜け何とも言えない旨さがあった。
「黒蜜のコクのある甘さが焼き立て団子の香ばしさでアッサリともたつかず食べれてしまいますね」
いつもより早くお腹に入れたマリーベルが二本目に黒蜜ときな粉をかけている。
「これは楽しいですね」
口角が上がったマリーベルが団子を頬張る。
「うん、気に入った?」
「はい!」
五本あった串団子はあっという間に食べ切ってしまい、お冷を飲み干して息を吐いた。
公園の中にある児童公園に向かう子どもたちが走っているのを横目に僕とマリーベルは席を立った。
公園へ戻りゆったりと散策する。
木漏れ日がキラキラと差し込み眩しさに瞬きをしてマリーベルを見る。
ゆっくり歩きながら周囲を眺めるマリーベルは時々溜息を吐いていた。
「どうかした?」
「いえ……私も元の世界では既に行き遅れと言われるのでしょうねと」
「そう言えば、向こうは結婚が早いって書いてあったね」
特に高位貴族ともなればマリーベルのように婚約も早く十八歳にもなれば婚姻をというのが主要な流れだったらしい。
「こちらでは二十歳といえばまだまだ子ども扱いで」
俯き加減で苦笑いを浮かべるマリーベルは子どもというにはどこか大人びて見える。
僕はと言えば突然のマリーベルの言葉に何も言えないでいた。
「カナタさんから見ても、私はまだ子どもなのでしょうか」
僕を伺うように下からチラッと見上げるマリーベルに、何と返事をしようかと僕は考える。
音のない時間にマリーベルと視線が交差した。
「すいませーん」
子どもの声と共に足元にボールが転がってきた。
コツンと僕の靴に当たり止まったボールを拾って走ってきた少年に渡す。
「ありがとうございます!」
「気を付けてね」
そう手を振って振り返ればマリーベルは遠くを見ながら「行きましょうか」と僕を促して散策に戻った。
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