惚れた方が負けなんだ

蓮条

お願いがあります!

かい~、お父さん、あと5分くらいで着くって~」

「わかったぁ~!」


 キッチンで夕食の準備をしている母親が、父親の帰宅時間を教えてくれた。

今日は事前に『帰る時間を教えてね』と母親から父親にメールして貰っておいたため、僕は玄関へとダッシュした。

 午後7時30分過ぎ。ちょっと緊張して来た。

 ひんやりとする床に正座し、指先を揃えて平伏して、今か今かと父親の帰りを待つ。


「にぃに、なにしてんの?」

「ちょっと大事な用があるから、ほの(妹の萌香ほのか)は向こう行ってて」

「えぇ~、なんで~?」

「なんでも!いいから、向こう行っててよっ」


 大事な計画がダメになりそうで、いらついた僕は声を荒げてしまった。

すると、リビングドアから顔を出した母親が手招きする。


「ほの、お兄ちゃんはパパに大事なお話があるみたいだから、ママとリビングで待ってましょう?」

「……つまんないの」


 やっと邪魔者が消えた。

 ホッと安堵したその時、玄関ドアのロック解除音が玄関内に響いた。

 僕はハッとして、慌てて三つ指ついて頭を下げる。

 ガチャッと玄関ドアが開く音がしたと同時に。


「お帰りなさい!!」

「ッ?!……どうした、そんな格好して」

「お父さんにお願いがあって、帰りを待ってました」

「……」

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