第三夜(2)




トスッと音がなる。

筒から放たれる弾が肉を貫く音だ。


「へぇ、急所をずらしたんだ。どこのソレかと思ったけど修羅鬼流の人か。それなら、まあ納得だね」


暗殺者の男は淡々という。

鳴鬼はふつふつと湧いて出る怒りを服に染められた自身の血を見て冷静になる。

…暗殺者の気分なのだろう。動きが止まったならチャンスだ。


「うーん。聞きたいことがあるってことかな。その感じは。まあでも…」


またもや肉を割く音がなる。

それだけではない。骨すらも、――


「うん。こういうときは動かせなくなるまで殺るのがいいんだよね」


それもそうだろう。

実力差もしくは戦闘に決着がついていると判断して相手がまだ動ける余力があるのに会話を始めるなど言語道断だろう。


「……それでナニが聞きたいのかな?君は」


男はそう言う。

あっ名前は言わないよ、と付け足しながらこちらの様子を見る男。


見定められている…?

鳴鬼がそう感じるのも無理はない。

止めを刺すわけでもなく、かといって積極的に交渉するわけでもない。

恐らく、ここで鳴鬼が何も言わなければ男は躊躇なく鳴鬼を殺すだろう。

鳴鬼は痛みや出血などは押し殺し言う。


「…何故、俺たちを狙う?」


「何故って、そりゃ依頼されたからでしょ。っていうのは違うか。君が聞きたいのは 依頼を受けた理由…って感じかな」


男はいつの間にか手に持った煙草を咥えて火をつけ、一息つく。

そうして続ける。


「うーん。正義のためかな。ああ、君たちが悪だと言いたいわけじゃない。…ほら、人って例外を嫌うって言うでしょ?」


「……今はさほど問題になってないけど、文化の違いで争うとか。それと同じように君たちには違うところがあった。だから、君たちを狙う者がいた。それは多数派でそれが正義なんだ」


「まあ、仕方のないことだよ。それを否定したいなら君たちはもっと強くあらねばならなかった、ただそれだけのこと」


男は止まらない。だが、そのどれもが鳴鬼を納得させられるものではなかった。

自分たち三人に共通する他の人とは違うこと。

それならば、すでに鳴鬼はわかっている。

わかっているからこそ、鳴鬼の脳はそれは違うと判断していた。


「納得できないって顔だね。それもそうか。人なんて全員が違う者だからね。同じなのはそれこそ、人によってつくられたプログラムのような存在だとも。でも、そうじゃない。そうじゃないんだ」


男はまるで正義の体現者であるかのように手を広げる。


「…人は理論じゃ動かない。どんな天才科学者でも知りたいという欲求があるように正義というカタチのない概念を、その思想を。それを幅広く定義付けたモノが正義なんだ。まぁ、簡単に言えば、君たちは恐れられてるってことかな」


――恐れられてる。確かに実際に人となりを知っているわけでもない人物がいたとして、その人物が単独で国家を揺るがす者だったとしよう。

その人がただただ実力を持つだけならば、それがどんなに恐ろしいモノかを理解できる。

勝者が正義。それもそうだ。勝った方にはそこで初めて正義の定義を見出せるのだから。


「…おっと、話が長くなったね。もう、そろそろ頃合いだ」


男は吸っていた煙草をポイッと下に捨てグリッと潰す。


「――ああ、最後に僕自身が戦いに望む理由を教えてあげるよ。さっきまでのは大義名分を得るためのモノだからね。それはね、僕が悪だからだよ。――楽しいのかな?僕自身もよくわからないけど。これだけはわかるさ。僕は悪だと」


スッと鳴鬼の中のナニカが冷めていくのがわかる。

鳴鬼は冷静に言う。


「…俺たちは、俺は正義の味方じゃない。だけど、俺は負けないように強くなった。だから、悪かどうか関係なく俺はあんたと戦うよ」

「だろうね」


瞬間――地面が割れる。

それは男の予想していたモノではなかった。

男の想定外のモノであった。


「ははっ、十分評価を上げてたけどまだなめてた!」


そこには竜玖が拳を地面に打ち付けた状態で現れていた。


…対亜人用麻酔銃。

それも毒などに耐性の高い竜人に特化させた鱗を貫通し体を麻痺させるもの。

それが、ものの数分で動けるまで回復した。

それは、男の数少ない常識を凌駕したモノであった。


男は麻酔銃を構え放つも今度の竜玖は動きが止まることはなかった。


――なんだ?なぜ、貫通しない。


そんな疑問も束の間竜玖は男のすぐ目の前まで迫っていた。


「君のは大和とラフとカルモッドの軍用武術の混合だろう。すでにさっきので見抜いたさ」


そう、竜玖の動きは効率化された軍人のソレ。

それを男は持ち前の戦闘センスで見抜いていた。


――動きの入り方が違う!


先ほどの攻防であったような軍人にある極度に効率化されたソレではなかった。

どちらかといえば、今の竜玖は…達人のような武術家ソレだ。


独特の歩法。

順歩のようで逆歩のようでもあるそれは男の目をもって知ってもナニか悟らせない。

近いのは鳴鬼の修羅鬼流か…だが次を悟らせず音を絶つのならば、暗殺術に近い。


「…学び発見かな」


男はこの武術を知らないモノと断定すぐさま動きが変える。

膂力、脚力ともに相手の方が上、術も未知数と来たのだ。ならば、正面から殺り合うのはやめておいた方がいいだろう。


だが、男は知らない。

すでに竜玖の術中に嵌っていることに。


地面には魔法陣が刻まれる。

魔術ならば、鳴鬼だと判断できただろう。

だが、事前情報ではそんな情報はなかった。

虚偽を掴まされたのはほとんどありえないと言っていいだろう。

魔法も魔術も才能だ。

どちらも使えるというのはほぼほぼあり得るモノではない。


ならば…と男は血溜まりができた死体を見る。


「…やられたね」


その死体はゆっくりと蜃気楼のように消えていく。

それが意味するのは


「――――くっ!」


ガンッという音とともに壁に飛ばされる。

ズキン、ズキンと男に痛みが走る。

骨が数本逝った。


そして顔を上げれば、そこには――刀。

魔術での治癒か、それとも魔法での治癒か。

すでに血を止めるどころか傷を塞いだ鳴鬼がいた。


「はぁ。歳はとりたくないね。まったく。碌に動けもしない」


男はそう言って悠長に煙草を咥える。

――火は…ともさせてくれないだろう。

何せこちらの戦い方をすでに知っているのだから。


「チェックメイトだね」

「そうだ、お前をDSW法令に従って確保する」


ドォン!!

爆音が当たりを包み込み、狭間という世界に一つの雲を作り出す。

カチとライターの火をつける。


「うん。流石にインプラントでも体に入れようかな」


男がそう言うとともに煙ははれそれは形となって現れる。

球体。

鱗のようで金属のような球体が先ほどまで三人のいた位置に存在していた。

魔法でも魔術でもないソレに男は悟る。


パキッという音とともに三人は球体から飛び出す。

驚いていないのは竜玖であったためこの球体を作ったのは竜玖だろう。


「訂正。僕の負けだ」


その言葉とともに男の意識は途絶えていた。





______________________________




後書き的なヤツ

投稿遅れてすみませんでした。

次からは投稿頻度を上げていくつもりなので許してくださいね。



設定集的なヤツ


修羅鬼流

主人公鳴鬼の扱う武術の流派。

刀や拳などの様々な分野があり、鳴鬼はいくつかの部門を突破している。

基本的には一に生存第一。二に戦闘勝利。

つまりは武術というよりもそれは武技や戦闘技術に近い。


対亜人用麻酔銃

事実名前の通りで、今回使われたのは竜人用の強力麻酔弾一度受ければ大人の竜人でも文字通り叩いても数時間は起きないほど。今回使われたのは拳銃型。


男について

亜人殺しや魔者殺しなどの異名を持つ。

どちらかといえば、外道の類の人間だが殺し依頼以外では基本的に人を殺すことはない。体の改造は少しだけしているもののそれ以外は魔者でも異能者でもなんでもなくただの一般人である。

男の装備

基本的には拳銃型のモノを使用。

稀にサブマシンガン型などのモノからスナイパーライフルのようなモノも使用。

今回は彼の軽装で重装で来られると今回の三人だけでは勝つことは厳しいと思われる。※時と状況にもよります。


ラフとカルモッド

本編では未登場の国たち。

どちらも科学が発展しているがラフはどちらかといえば魔工学よりで、カルモッドは人体改造などを主体としている。







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