第二夜(2)
ドクンドクンと心臓が鳴り続ける。
…音の一つ一つが体に響く。
それでもなお、この体は変化を受け入れる。
鳴鬼…の異能『鬼』は従来あった異能を逸脱したナニカだ。
それはあり方としては魔導に近い。
鳴鬼の持つ
「GAAAAaaaaaaa!」
しかし、相手にそれは関係ない。
どちらかと言えば、動きが停止し隙だらけなのは鳴鬼の方である。
――瞬間、音が消える。
第四等級の天禍の視界がブレる。
――否、ズレる。
「…援護は任せる」
短く、されど意味が伝わるように鳴鬼は言葉を紡ぐ。
鳴鬼の異能は自身の肉体を存在しない亜人へと変化させるモノ。
そうやってDSWには説明されている。
鳴鬼は第四等級。しかし、異能を使った状態の彼は身体能力だけなら第二等級にすら届きうる。
ならば、第四等級の天禍が八体ほどしかいない状況で負ける通りはない。
一閃。
魔力を纏った斬撃が天禍を襲う。
「GAaaa!?」
生物的な本能か。
それとも、根源的なナニカか。
相対する天禍は初めてそこで鳴鬼に恐怖を覚える。
しかし、天禍の視界にすでに鳴鬼の姿はなく。
――そこに残るは二等分にされた天禍の群れであった。
◇
戦いは一方的であり、結果DSWの戦闘員の勝利で終わる。
この狭間において最も高い等級は第三等級の天禍であったものの、一部人物の奮闘もあり死者はなかった。
狭間の確認場所:海洋魔術国家『大和』・里山県
交戦部隊:カリスト、エウロパ、カルメ
死者:なし
負傷者:二十一名
備考
交戦した隊員のほとんどがセンサーのような超音波のような不思議な音を聞いたと報告。それに伴い、DSWの調査員が派遣されるも特に成果はなし。ただ、耳の良さが取り柄と言う調査員の一人が天禍の声がしたと再度報告されたことが発覚。これにより、再度戦闘員と調査員の派遣が決定。派遣はまた後日行われることがわかっている。
フッと報告書が書かれたバインダーを一人の男が投げつける。
彼はDSWの関係者ではあったが、彼自身がDSWに入っているわけではない。
彼は苛立った顔を隠すこともなく、自身の部屋で口に出す。
「……ずいぶんなことだな。まぁだがいい。アレは見つかってないようだしな」
男はそう口に出す。
情報の洩れを気にしない。否、気にしてももう遅い。
そんな自信が彼を守っていた。
「それにしてもカリスト分隊か…。突然変異型異能を三人入隊させたアレか。突然変異型、確かにそうなのかもしれんがあの異能はそんな異能の一言で片づけていいモノではない」
男はふぅと吸っていたたばこを机に―
――否、三人の名前それぞれに押し付ける。
「やはり始末するか、――だが、そうなるとDSWが邪魔か」
DSWは曲りなりにも世界を股にかける巨大組織であり、異能者保護集団だ。
戦闘員ならばともかく組織内の一般人を巻き込めば、面倒事になるは確実なのだ。
ならば、どうするか。
彼らを誰も巻き込まないように始末するしかない。
幸い、
しかし、だ。DSWの戦闘員は基本的に正式な軍隊よりも平均的な実力は高い。
そんな者どもを殺せる、否、そもそも依頼を受けてくれる人物など彼には心当たりがなかった。
――一人を除いて。
「奴に頼むか」
奴なら仮に負けて捕まってしまってもこちらの情報を吐くはずがない。
そう思って彼は電話を奴をかけた。
◇
「よし、僕の勝ちだね」
「はあぁぁぁ!?なんだよ、その手札。おかしいだろ!」
作戦が終わり隊室に帰っていた鳴鬼は隊の中でも特に仲の良い隊員である狐々露と竜玖とともにカードゲームをしていた。
「おい!鳴鬼も何か言えよ!」
「ははっ。いや、狐々露は運もいいしたまにならあり得るんじゃない?」
「…それがほんとにたまにならよかったがな」
狐々露は運がいい。
こういう運が絡むゲームでは勝つことが多い。
もちろん、単純にそれが実力なのかもしれないが、実力と技術関係なく彼の運はかなり高いモノと言えるだろう。
不貞した顔で竜玖がもう一度カードを配る。
そして、「もう一度だ!」という竜玖の声で新しいゲームが始まった。
「明日、どっか行くか?」
初めにそう言ったのは竜玖である。
彼らは元々同じ場所で育ち同じ場所で学んだ仲間である。
それ故に遊ぶことは多々あったのだが、それも戦闘員となって正式採用された今となっては少なくなったと言えた。
「いいぞ。遊ぶってなると、やっぱ街に出るのか」
真っ先に返事をするのは鳴鬼。それに続いて狐々露も了承する。
話は変に変わることもなく明日の予定を組み立てていく。
「そういえば、武器の持ち出しってありなのか?」
「…そもそもパスを繋げていれば大丈夫でしょ」
「それもそうか」
DSWの戦闘員は部隊関係なく戦闘を行う場合がある。
それは緊急時であり、前兆もなしに現れた天禍を討伐するときの話だ。
だが、常に武器を持つのは天禍が一般公開されていないのも相まって禁止されている。
そのため、彼ら武器とパスを作る。
パスとはいわば武器の通り道であり、使用者の元へ召喚するものだ。
これは魔工学という技術を応用したものでありDSWはソレを多く取り込んでいた。
パスというのもその一種である。
「じゃ、明日」
「明日」
「サラダばー」
そうして、彼らのその日は幕を閉じた。
狭間に残る謎の音と彼ら狙う存在を残して。
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設定集的なモノ
海洋魔術国家『大和』
深い歴史をもつ立憲君主制の国家。
島国でかなりの技術的にもいろいろと発展している世界でもトップクラスの国家。
また、名前の通り魔術が発展した国家であり魔法はそこまで普及していない。
魔術
魔法
魔導
魔術、魔法とは違う別の力。術式は人によって異なり
この世界の魔者の適正について
魔者とは魔術ないし魔法、魔導を使う者のこと指す。
魔者の適正は魔導を除き、人によって異なるが十人に一人くらいの感覚で使うことができる人はいる。魔導の場合は一億人に一人規模。また、魔者は才能がほとんどを占めており、魔者というだけで強くなった人物は単純に才もあって努力の天才だったという者のみである。
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