3-3.私なりの理由
今日も悠斗は、いつも通りクラスメートと笑い合っている。
その姿を見ていると、胸の奥が締め付けられる。
(どうして、こんなに胸が苦しいんだろう。)
私は何もしていないし、何も変わっていないはずだ。
それでも、心の中で――その理由がわからないまま、私は悠斗との距離を感じる。
今日は、またあの冷たい目で見られた気がした。
私の気持ちに気づいてくれたら、きっとあの笑顔が戻ってくると思ったけど、いつまで経っても悠斗の態度は変わらない。
「悠斗、なんで……?」
私は、自分がなぜこうして距離を取っているのか、わからなくなりそうだった。
でも、どうしても言えなかった。
あの日、私が言った言葉が全てだと思ったから。
私が悠斗に突き放すようなことを言ってしまったから、それで関係が壊れた。
それが一番辛いのに、自分が何をしているのかがよくわからない。
昼休み、みんなが食事をしている間、私は静かに席に座っていた。
悠斗と目が合った瞬間、私はまた心臓がドキンと鳴る。
でも、何も言えずに目をそらしてしまう。
(どうして、こんなに意識してしまうんだろう。)
私はただ普通に過ごしていたはずだ。
でも、悠斗が私に冷たくすることで、何かが崩れてしまったような気がして、心の中で整理できなくなった。
「美羽、あんまり元気ないね。」
それは、親友の彩華が言ってくれた言葉。
でも、その言葉すらも、なんだか素直に受け入れられなかった。
「ううん、何でもないよ。」
私がそう言ったとき、彩華は少し黙った。
その視線が、また私に刺さるようで怖くなる。
(どうして、みんな気づくんだろう。こんなに必死で隠しているのに。)
「悠斗と何かあったの?」
その言葉が私を打ちのめした。
彩華は、私の気持ちを察しているのかもしれない。
私の気持ちなんて、どこかで簡単に見抜かれてしまう。
「……うん。」
その一言が、私の胸を痛ませた。
私は結局、何も言えなかった。
ただ、自分の心の中で苦しんでいた。
悠斗と話したい、でも話すのが怖い。
どうして、こんなにも心が引き裂かれるような気持ちになるんだろう。
放課後。
私は、また一人で帰るつもりだった。
でも、今日は何となく足が止まった。
悠斗が前を歩いている。
少しだけ視線を合わせた瞬間、悠斗は私に気づいた。
そして、いつもと変わらない顔で、私を見つめてきた。
「……美羽。」
その一言が、どうしてこんなにも胸を締め付けるのだろう。
私は思わず目を逸らしながら答えた。
「……うん、何?」
「元気ないみたいだけど、大丈夫?」
その言葉が、私の心を震わせた。
大丈夫だと思ってたのに、大丈夫じゃなかった。
「……大丈夫。」
でも、私の声は震えていた。
どうしてだろう、悠斗の言葉一つでこんなにも不安になる。
私はまた目を逸らした。
でも、悠斗がちょっとだけ近づいてきた。
「お前、最近どうしてるの?」
その言葉に、私はまた心が痛んだ。
どうして、悠斗が私を気にかけてくれるんだろう。
「別に、何も変わってないよ。」
「そっか。」
悠斗の答えに、私は心の中で「そっか」と言い返した。
でも、どうしてか、この会話が終わることが恐ろしかった。
悠斗が今、どう思っているのか分からない。
私が、どんなに望んでも、もう前みたいには戻れないのかもしれない。
帰り道。
私は、また一人で歩いている。
足元がフラつくのを感じるけれど、また悠斗と話せなかったことが、頭の中でぐるぐる回っていた。
(どうして、私がこんなに不安で、苦しいんだろう。)
突然、胸の奥に何かが押し寄せてきて、涙があふれそうになる。
でも、私はそれを必死で抑え込んだ。
もう、これ以上感情をさらけ出すことはできない。
悠斗が変わったのではなく、私が変わったから。
それが、私の理由。
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