第5話 抜き打ち小テストの結果
「それでは小テストを返却して行きます」
2時間目の終盤。授業は英語。
女性の教師が授業の初めに実施した抜き打ち小テストの採点を終え、生徒の解答が記入されたペーパーをトントンと教壇の机で整える。
2時間目の授業の開始時に、いきなり実力を試すように20分間の小テストが設けられた。そして、その試験の解答時間が終了し、採点も完了して今に至る。
悠太は小テストに対して大きな手応えがあった。その上、学年首席の悠太にとって小テストの問題は簡単であった。中学校の英語の単語と文法のマスターと本日の授業に関する予習を徹底していれば簡単に解ける内容であった。
「名前を呼ばれた人から取りに来てください。まずは最高点から。最高点は成瀬君。なんと100点」
パチパチッ。パチパチッ。
自然と教室のクラスメイトから拍手が湧き上がる。女性の英語の教師も便乗するように合わせて拍手をする。
悠太は拍手を背に自身の席から教壇に向けて移動する。
「さすがは学年首席ね。素晴らしいわ」
女性の英語の教師は称賛の言葉を添えて悠太に小テストのペーパーを差し出す。
「いえいえ。ありがとうございます」
悠太は嬉しい気持ちを噛み締めながら、謙虚な姿勢で静かに感謝を述べ、小テストを受け取る。
ペーパーの左側には赤文字で100点と綺麗な文字で採点の結果が書かれていた。その客観的な数字の評価が悠太の高揚感を昂らせる。
悠太は周囲の多くのクラスメイト達から多数の称賛や羨望の眼差しを受けながら自身の席に戻る。
「成瀬君さすがだね! 1時間目に続いて大活躍だね! 」
席の近い静香がニコッと笑みを浮かべる。
その笑顔は悠太にとって可愛く、魅力的に映った。自然と胸がトクンッと高鳴る。
「次は2位で綾波さん」
悠太の次に静香の苗字が女性の英語の教師から呼ばれる。
「あ、私だ。取りに行ってくるね! 」
名前の呼ばれた静香は明るく返事をしてから席から立ち上がり、先程の悠太のように教壇に向かう。
それから3位に風香、4位に凛の順番に呼ばれる。
静香、風香、凛は私立の中学出身ということもあり、勉強が得意なようだ。
3人共、特に喜びを見せずに、さも当たり前のように教師からペーパーを受け取っていた。
その後も小テストの成績順にクラスメイト達の名前が同じように呼ばれる。
「最後に今回の小テストの最下位です。岡本君、こちらに取りに来なさい」
女性の教師は何処か冷めたような口調で大介の苗字を教室の全体に行き届く声で呼ぶ。
大介は無言で立ち上がり、教壇に向かう。
「1時間目から思ってたけど、あの人やばくない? 」
「本当に! 当てられた問題は解けないし、小テストも最下位とか色々とやばいよね」
「この学校での初授業で予習すらしてないんだもんな」
「予め先生から伝達があったのにな」
クラスメイト達がヒソヒソと大介に対する不信感や疑念に関する会話を交わす。
皆が汚物や奇妙な物を見る目を向ける。完全に腫れ物扱いだ。
そんな空気感を敏感に感じ取ったように、大介は居心地が悪そうに身体を縮こませながら、教壇から自身の席に戻る。
今の大介は中学時代の態度が大きい彼とは大きく異なっていた。あの頃の面影は完全に消え去っており、微塵も残っていない。
「はいはい。静かにして」
英語の教師は場を鎮めるように、パンパンッと両手を強く叩く。
生徒達も素早く反応し、教師の意図を読み取った上で口を閉じる。
「これからも本日のように抜き打ちで小テストを実施することがあります。各自、常に勉学に励むように」
女性の英語の教師が締めの言葉を生徒達に伝えたところで、タイミング良く授業終了を知らせるチャイムが鳴った。
⭐️⭐️⭐️
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