3.三人の想い

「三人の再会と羅良の結婚お疲れ様を祝ってかんぱーい!」

「「かんぱーい!」」


 久ぶりの三人での飲み会はとても盛り上がった。拓斗君は今も新卒で入ったメガバンクで営業をしているらしい。それなら、雅ちゃんと結婚しても余裕で雅ちゃんを養っていける。子供だって望める。だから二人がよりを戻せばいいと本気で思う……のだが……。


「俺はやっぱり雅とはこれくらいの距離感が丁度良いな。雅は友達としては最高だけど、彼女にするとちょっと甘えん坊すぎるもんな!」

「えー。そんな事ないわよ~。そんなに甘えてたかなぁ? ねぇ、羅良も私が甘えん坊だって思う?」

「女子は甘えん坊くらいが丁度良いと思うわよ。拓斗君、好きな人に甘えられたら嬉しいって思わないの?」

「あはは……俺はあんまり思わないかも……自立している女性の方が好きだからさ」

「失礼な! 私だって立派に社会人してますー!」


 雅ちゃんと拓斗君はやっぱり最高のお雛様とお内裏様だ。こんなちょっとしたやり取りでも二人の相性の良さを感じる。なのに、拓斗君は何故か雅ちゃんとよりを戻したがらない。


**

***


 「あー、今日は楽しかったし美味しかった! 私はT線で帰るから! 羅良と拓斗は逆方向のS線よね! じゃ、またね二人とも!」


 結局、雅ちゃんと拓斗君はこの飲み会ではよりを戻さなかった。二人の間にはそんな素振りもなかった。これはもう、今日計画を実行するしかないわ。


 私は拓斗君とS線に向かって歩いた。チャンスを伺いながらどうしようもない世間話をしていたら、突然拓斗君が真剣なまなざしで私を見た。


「羅良……さっきまで、雅と俺のよりを戻させようとしてたろ」

「……そう見えた?」

「見えたさ。俺はさ、さっきも言ったけど、甘えて来る女よりも自立した女性の方が好みなんだ。そう、例えば羅良みたいな……」


 やっぱり。拓斗君の気持ちは私に向いていたんだ。これは私としては都合が良くないわ。でも、その想いを利用する事なら出来る。そう、私の目的のために……。


「拓斗君……私の家、U駅の傍なんだけど、ちょっと寄って行かない?」

「えっ……いいのか、羅良……」

「良いのよ。むしろ歓迎だわ」

「じゃぁ、ちょっと寄って行くか」


 そうして拓斗君を家に招き入れる事に成功した。後は、前から用意していたを飲ませるだけだ。そうすれば拓斗君を好きなように出来る。


「少し飲み直さない?」

「おっ。いいねぇ。それって期待しても良いって事か?」

「何を?」

「何をって……ねぇ」


 拓斗君は私が用意した睡眠薬入りのハイボールを一気に煽る。いいわ、その調子よ。


「俺は、雅と付き合ってみて分かったんだ。本当は羅良の事が好きなんだ……って……え……? なんか……目の前がゆがんで……」


 ふふ、拓斗君。これであなたを私の好きなように出来るわ。少しだけ苦しい事もあるかもだけど、我慢してね……。

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