第53話 運動会優勝に向けて①
【宮城翔】
2時40分頃に、練習に行こうとすると佐川からコネクトで、
「綱引きの綱を見つけました。宮城君と工藤君は大菊町内会館の前に来てください」
とメッセージが来ていた。
「翔、先行っててくれ。色々整理しないといけねぇからな。」
真からメッセージが来ていた。
俺だけ先に行くことにした。
急いで大菊町内会館前に行くと、佐川が大菊町内会の建物の入り口の前で待っていた。
「佐川、綱引きの綱を見つけたってどういうこと」
「前に、
「現在の町内会の運動会では綱引きは行ってはおりませんが。お祖父様に許可をもらって、綱引きの綱を貸して頂けることになったのです。」
「おじいさんに許可?」
「ワタシ達の家系は代々、町内会会長をしています。」
佐川みたいなのが会長か。副会長がしっかりしてないとうまくまとまらないんじゃないか。
佐川は、大菊町内会と書かれた黄色の袋から「入口」と書かれた板がついているカギを取り出すと、町内会の建物のドアのカギ穴に入れた。カギを回しドアを開いた。
集会場に入るとその奥にあるドアにまっすぐに向かって行った。
町内会の建物のことも良く知っているようだった。
そこは、物置部屋だった。今度は、「物置部屋」と書いてある板のカギを取り出すと、物置部屋のドアを開けた。
物置部屋には、椅子、テーブル、祭りで使う太鼓や提灯などの様々なものが整理されて置かれていた。佐川は、大きな灰色のロッカーを開けた。
「宮城君、町内会の運動会で使用していた綱引きの綱です。練習に使えませんか」
佐川が指さしたロッカーの一番下に綱引きの綱が置かれていた。
「すごいよ、佐川。これがあれば本格的な練習ができる。ありがとう!」
そのとき、
「佐川、翔、いるのか!!」と声が聞こえてきた。
「物置部屋だよ!真!」
「物置部屋ってどこだよ!広くて分からねぇよ!」
佐川と俺は、物置部屋から出て真を迎えに行った。佐川についていっただけの俺は気が付かなかったが、集会場は思っていたより大きかった。
「そんなとこにいたのかよ。」
佐川が、
「綱は埃だらけです。掃除機で掃除しましょう。お二人は、ロッカーから綱を取り出してください。ワタシは、掃除機を取りに行ってきます」
そう言うと、佐川は集会場の別の場所に向かって行った。
俺が真にロッカーにある綱引きの綱を見せると
「これ、綱引きの綱じゃねえか!どうしたんだ!」
「佐川が、昔町内会の運動会で使っていたことを覚えていたんだよ。おじいさんにに綱を貸してくれるように頼んだらしい」
「そうだよ。あいつのじいちゃん町内会会長なんだよ。でもさ、オレ、町内会の運動会、小学生のころ出てたけど綱引きなんてなかったぞ」
「佐川の
「あいつの
佐川が持ってきた掃除機で綱引きの綱を掃除した。
やっぱり綱引きの綱は重かった。佐川も手伝ってはくれたけど体力が無いせいかほとんど役には立たなかった。
川沿いのグラウンドに着くとクラスのみんなが待っていた。
「あんた達遅かったけど、どうしたの」
「末広!見て驚け!!オレたちが遅くなった理由はコイツだ!!」
真が綱引きの綱を末広さんの前に出した。
「凄い!こんなものどこにあったの!」
「町内会の建物だ!だよな翔!」
「そうなんだよ。佐川のおじいさんが町内会長やってて、貸してくれたんだよ」
「本当だ!!」
「これでちゃんとした練習ができそう!」
「こういうの見るとやる気出てくるよね!」
「こんなふうに練習できるのって俺たちだけじゃね!」
みんなも集まってきた。
「そういえば佐川のおじいちゃんって町内会長だったわね。でも、町内会の運動会で綱引きなんて無かったわよ。」
「佐川の
「佐川みたいなのがずっと会長…。想像したくもない。」
綱引きの綱を運んできて、疲れて休んでいた佐川が合流してきた。
「みんな!宮城君たちが綱引きの綱持ってきてくれたからここで練習するわよ!」
「ありがと佐川!」
「お前すごいな!」
「でも、私は佐川みたいなのが会長の町内会なんて嫌だけど。」
「私たちの代の町内会会長は末広さんがなってね!」
「無駄話はいいから始めるわよ!」
そう言うとみんな綱を持ち始めた。
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