第22話 霊への気持ち その1

【具志堅沙苗】

 麦ちゃんが、

 「そろそろ、下に降りようね。」

 と、言いました。


 「美奈子さんは、これからゆっくりあの世で生活するんですね。良かったです。」

 

 「そうさ、そこにある白米、水、泡盛は、寝る直前に、片づけてね。」

 

 「分かりました。」

 

 私と麦ちゃんは、ゆっくり階段を下りていきました。

 家全体も、エアコンを入れても、真夏のようだったあの暑さは、消えていました。

 そして、エアコンも切れていました。

 

 「沙苗、お母さん、良くなったんでしょ。」

 お姉ちゃんが、興奮気味に、結果がわかっているように聞いてきました。

 

 「うん、お母さん、今、とても穏やかに寝ているよ。」 

 

 「それは、良かった。」

 お父さんも、ほっとしたようでした。お父さんの目には、少し涙が見えました。

 

 「じゃ、お茶でもいれますね。何か、希望はありますか?」

 

 お姉ちゃんが聞いてきました。

 その時、家のチャイムがなりました。

 お父さんが、インターホンに出ました。どうやら、御祖父おじいちゃんが来たようです。

 

 御祖父おじいちゃんは、

 「貴子のことで、用があるらしいが、俺に何ができるというんだ。まして、今更、俺の親父と関係があると言われても困るんだよ。」

 

 御祖父おじいちゃんは、すでに怒っていました。

 お母さんから、御祖父おじいちゃんは、自分の父親の話をすると、とても機嫌悪くなるということを聞いていました。

 

 「まずは、座ってください。」

 お姉ちゃんが、みんなにお茶を配ってくれました。

 

 御祖父おじいちゃんは、一口だけお茶を飲んでから、

 「それで、貴子の病気とあの人とどんな関係があるんだ?」

 と、聞いてきました。

 

 お父さんが、

 「まずは、こちらの宮城麦子さんと宮城翔君を紹介させてください。」

 御祖父おじいちゃんは、他人の前で怒りを見せていたのを恥ずかしく思ったのか、

 「貴子の父の健勝けんしょうです。」

 挨拶をした後、少し目を下向きにしました。

 

 「宮城翔君は、沙苗のクラスメイトで、麦子さんは、その御祖母おばあさんです。」

 

 「『宮城』ってことは、沖縄の方ですか?」

 

 「はいそうです。」

 御祖父おじいちゃんは、少し親近感を覚えたようです。

 

 「そうですか。それで、なぜお二人がここにいらっしゃっているんですか?」

 

 「実を言うと、麦子さんは、ユタなんです。」

 御祖父おじいちゃんが、麦ちゃんの顔を見ると、全てを理解したような表情をして、少し声を荒げて、

 「ユタ?分かったよ。だから、貴子の病気が何か霊的なものとでも言いたいんだな。そして、それがあの人と関係があると。」


 そういうと、何か胡散臭いものでも見るように、麦ちゃんを見ました。

 私は、その御祖父おじいちゃんの態度に、肉親として少し恥ずかしくなりました。

 

 麦ちゃんが、

 「私さ、聞きたくなかったら、話さなくてもいいよ。ただ、沙苗ちゃんの家族にとっても、あんたにとっても大切な人でしょ、貴子さんは。」

 麦ちゃんは、少し声を低めにして諭すように言いました。

 

 宮城君を見ると、またかって感じで見ていました。思わず、目が合いました。

 宮城君は、「大丈夫だよ」ということを知らせるように、私を見てうなずきました。学校では、おどおどしているように見えていましたが、今は違う人に見えます。

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