取り憑いた怨霊とともに体育会系への鬱憤を晴らします

百年無色

その1

 ぐずぐずと上体を起こして目覚まし時計を止めた羽黒鵬市は、首を白い大腿で挟まれていることに気が付いた。

 顔を上げると半裸の女が自身の巨乳越しに見下ろしている。

 なんで朝っぱらからこんなのを肩車しているのか――などと寝起きの頭で考える。

 思い当たる節はひとつだけあった。

 昨日の放課後に上級生の不良少女に誘われた怨霊召喚儀式である。

「あいつらの支配を終わらせよう」

 そんな声を掛けられて誘われたグランド隅の古い木造倉庫で、待っていたハイテンションな女生徒と三人で怨霊の召喚儀式を行ったのだ。

 誘った不良は三年生の袋井礼麗、待っていたハイテンションは二年生の守屋鈴佳。そのふたりと鵬市の三人で行われた儀式は魔法陣と祭壇を前に礼麗が怪しげな経文を唱え、鈴佳は拍子木を鵬市は言われたまま鐘を鳴らす。

 そんな儀式が三十分ほど続いたところで鵬市の視界が暗転し、その直後には崩れた倉庫の外にいた。そして、横付けした救急車にストレッチャーで搬送される礼麗に鈴佳がすがりついて泣きじゃくっているのをぼんやりと見ているうちに猛烈に眠くなり――目覚まし時計で起こされたのだ。

 ということは、この巨乳は――。

「怨霊?」

 見上げたまま問う鵬市に女が笑う。

 *見たらわかるだろ? 我が身がサキュバスにでも見えるのか?*

 ……図星だった。

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