死神彼女と一緒に生活

散々人

第1話 死神が俺の前に

 俺は寝苦しさで目が覚めた。

 時計を確認すると四時だ。

 起きるにはさすがにまだ早い。

 俺はいったんトイレに行き、また自分の部屋に戻って来た。

 すると俺のベッドの横に誰かが立っていた。

「う、うわぁぁぁぁぁ。だ、誰?」

 俺は驚いて飛び上がった。

 謎の人物は黒く長いローブをまとい、こちらに背中を向けていたが、俺が声を出したことでゆっくりと振り返った。

「私は死神だ」

 そのローブをまとった人が言った。フードもあるので顔はよく見えない。

「し、死神?」

 俺はなんのことだか理解ができなかった。

「そうだ。お前はもうじき死ぬのだ。だから迎えに来た」

 その人が言うのだった。

 俺が死ぬ?

 そんなバカな。

 俺はまだ高校二年だぞ。体もいたって健康だし死ぬなんてはずがない。

「お、俺が死ぬって、いったい、どういうことですか?」

 俺はわけがわからないが、一応訊いてみた。

「お前は、今日、学校に行く途中で交通事故に遭って死ぬのだ」

「交通事故!」

 それならあり得ない話ではない。

 いや、それよりもこいつ本当に死神か?

 俺は少し気持ちが落ち着いて冷静になって来た。

 よく考えたら死神なんてものがいるはずがない。さては、泥棒かなにかか?

「あんた、冗談はそれぐらいにして、出て行ってくれ! そうじゃないと警察を呼ぶぞ」

 俺は言ってやった。

「フハハハ、信じないのも無理はない。しかし、私は本当に死神だ」

 そう言うと、死神を名乗る奴がローブの下から大きな鎌を取り出した。

 鋭い刃がギラっと暗闇で光った。

「ヒィィィィィ」

 俺は恐怖で思わず引きつった声を出してしまった。

「わかったか? 私は本当の死神だ。お前は今日学校に行く途中に交通事故で遭って死ぬのだ。だからこうして迎えに来たのだ」

 死神が言う。

「あ、あの、死神って死ぬ直前とかに現れるんじゃないんですか?」

 俺は死神なんてものは信じてはいなかったが、なんとなくそんなイメージを持っていた。

「フフフ、前もって知っていたほうがお前もいいだろうと思って、早めに来てやったのだ」

 そんなことあるんだ。

 余命宣告みたいなものなのかな?

「あの、それじゃあ、ついでに訊きますけど、俺って今日の何時頃死ぬんですか?」

「それはな……」

 死神は手帳を取り出して確認しだした。

 覚えていないのかよ。

 なんかいい加減だなぁ。

「お前の死ぬのは、今日の午前八時十五分だ」

 死神が答えた。

「あのう、通学途中に交通事故で死ぬってことですよね?」

「そうだ」

「今日、日曜なんですけど……」

「?」

「今日学校には行かないんですけど……」

「そ、そんなはずは……ちょっと待て」

 そう言うと死神はいそいそと手帳をめくってなにやら調べ出した。

「あれ、おかしいなぁ。なんで、ちょっと待てよ。うーん」

 死神はどうやら慌てているようだ。

「えー、そんなはずないんだけど……確かに今日であってるはず」

 死神は焦って暑くなったのか、被っていたフードをはずした。

 すると、その死神の顔が見えたが、なんと若くてかわいい女の子だった。

「あっ! ヤバい……間違えた」

 死神がおでこに手を当てて天を仰いでいる。

「あのう、なにを間違えたの?」

 死神が若くてかわいい女の子とわかって、俺は急に恐怖心が消えた。

「いやぁ、参ったなぁ。ほら、ここ見て」

 死神が馴れ馴れしい態度で自分の手帳を俺に見せてきた。

「ほら、よく見たら来年だった。あんたが死ぬのは来年だ。来年の今日の八時十五分ね」

「は、はぁ」

「とにかく今日は間違いだから、忘れてね。じゃあ、私はあの世に帰るから」

 死神はそう言うとそのまま去ろうとした。

「待って! ちょっと、もっとよく話を聞かせてよ。俺って来年死ぬの?」

 俺は死神を止めた。

「ま、まぁ、そうなんだけど、とにかくこのことは忘れて。お願い」

 死神はやたらと軽い感じだ。

「忘れられないよ。俺まだ高校二年だよ。来年って言ってもまだ高三だよ。死にたくないよ。まだ彼女もできたことないのに。なんとかならないの?」

「いや、なんとかって言われても……。こういうのを決めるのは私じゃないし。私は死神だから単に死ぬ人を迎えに来るのが仕事だからさぁ」

 死神はそんなことを言うが、俺としてはここで死神に帰られては、来年のその時期が来た時に死んでしまう。なんとか助かる方法を訊き出さないといけないと必死だった。

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