第46話

「にゃんたん、るーなたんところ」

 まずは1秒でも早く助けを呼ぶことだ。

「にゃるべく、はやくちゅるっ」

 私の気持ちが上手く伝わったのか、それともにゃんたんにもロッドさんの覚悟が伝わっているのか、ものすごいスピードでルーナちゃんの元へと飛んでくれた。

「しゅごい」

 ルーナちゃんは、鎧アーントの死体の山を4つ築いていた。

 って、いくらすごくても、その山の何十倍もの数の鎧アーントがまだいるし、今も次々生まれている。

 この調子なら大丈夫なんじゃない?なんて思えるわけなんてない。

「ルーナおねーたん、ロッドしゃんが、小屋で信号を上げてほちいといってまちゅ」

 上空から声をかけると、ルーナちゃんはきらりと光るサーベルに刺さった鎧アーントを山の上にぶんなげてから、小屋に向かって走り出した。

 その後ろを鎧アーントたちが追いかけていく。

 うわー、やばいよ、ルーナちゃんが小屋に無事にたどり着けるか分からない。。

 と、思ったら、ルーナちゃんを追いかける鎧アーントの前に、角兎のうさたんが飛び出した。

 キラキラと輝く角で突き刺し、ぶんなげ、突き刺し分投げしている。ふぉぉぉ、うさたんも強い!

 とりあえず、私は何の役にも立たないのは間違いない。

 どうしようか。上空から見えるのは鎧アーントの群れの黒。森の緑。

 信号って、救難信号みたいな奴だろうか。狼煙みたいな?それともモールス信号的な?

 どちらにしても、信号ですぐに助けが必要だということがどこか……誰かに伝わるのだろう。

 け、ど。

 眼下に広がる雄大な自然。

 ……この単語が、こんな絶望的な意味を持つ日が来るとは思わなかったよ!

 その、助けは、どこから来るの?どれくらい来るまでにかかるの?

 それまでロッドさんは大丈夫なの?

「にゃんたん、ロッドさんのとこに行ってにゃの」

 ルーナちゃんに信号のことを頼んだと伝えよう。助けが来るまでロッドさんも逃げてって伝えよう。倒そうとせず、ただ身を守るために、例えばどっかの岩を背にして向かってくる鎧アーントを倒し続けるとかならロッドさんなら苦でもないんじゃない?

 そう思うのに、ロッドさんは女王に刃を向けている。

 だけど、やっぱり、兵隊鎧アーントと呼べばいいのか、通常サイズの鎧アーントが右から左からロッドさんの行く手を阻む。

 ちょっとでも何か助けになれば……。

 羽猫のにゃんたんにくわえられて上空から見ているしかない私は無力だ。

 しゅんっと頭を下げる。

 ああでも、もし信号を見た人が駆けつけてくるときに、上空にいる私が目印になるならまったくの無力ってことはないかな。

 あっちから来てるとか見つけたらロッドさんに教えることもできる。

 ちょっとでも役に立ちたくてぐっとこぶしを握ると、こつんと握ったこぶしにポシェットが当たった。

「あ、ちょうだ!収納ポシェットの中ににゃにかあるかも!」

 ポーションとか、怪我をしたらロッドさんに渡すとか。

 いやそれよりも、HP回復みたいな?体力勝負なところがあるから、体力を回復するとか疲れをとるとか用の?

 ポシェットに手を突っ込んだら丸くてひんやりとしたものに手が触れた。

「レモンでしゅ……」

 なんかレモンのクエン酸だかなんだかが、疲労回復にどうのとか……。

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