第23話
「それから、人間は料理しないと食べられない。こんな大きな獲物は食べきれない。あと、怖くて倒れてるだろう!ミチェを怖がらせるなら、もう出入り禁止だ!」
ロッドさんがルーナちゃんを叱っている。
「違うでちゅ、怖くない、ミチェは怖くて倒れたんじゃないよ」
誤解を解こうと立ち上がったら、くらっと貧血みたいに頭がふらついた。
「大丈夫かミチェ!」
ロッドさんがとっさに私を支えて、それから抱っこしてくれた。
「おにゃか……しゅいて……力がでにゃいよ……」
ロッドさんがハッとした。
「すまん……何か食べるもの用意して出かければよかったな……」
ちょっと落ち込み、それから、ルーナちゃんに顔を向けた。
「ルーナ、悪い、強く言い過ぎた。お前はミチェに食べさせてやろうとしたんだな……。甲羅ベアは甲羅のようにかたい皮膚で急所を守っているから倒すの大変だっただろう」
ロッドさんが角兎の角に刺さった大きな鼠を抜き取った。
「弾力があって剣が刺さりにくいのに、お前もよく丸鼠を一突きにできたな」
それからロッドさんは羽猫にも視線を向けた。
「かみつき攻撃なし、引っ掻きだけで倒したのか……なんというか……ミチェのためにいつも以上に力が出たっていう感じか?」
ルーナちゃんが尻尾を振り振りとしている。
「ルーナもね、牙で喉をついてすぐに倒せたよ!なんだかいつもよりルーナ強かったよ!」
ロッドさんの周りをくるくると回りながらルーナちゃんがどや顔を見せている。
「火事場の馬鹿力……いや、母性本能?子供を守ろうとするといつも以上に力が出たってことか?」
ぐぅとお腹が鳴った。
「っと、悪い、ミチェは倒れるくらいお腹が空いてたんだったな!」
ロッドさんは私を抱っこしたまま、台所に行こうと体の向きを変えた。
「うわっ、なんだ、このぴかぴかした物体!」
伏せた鍋を見て驚いている。
「って、鍋か……?どうしてこんなにぴかぴか……ルーナ、どっかからまた拾ってきたんじゃないだろうな?」
そういえば、私もルーナに拾われたし、拾ってくるなと言われてたけど、ルーナは拾い癖があるのかな……。
「違うよ、赤ちゃん…ミチェが綺麗にしたの」
ロッドさんが私の顔を見た。目が真ん丸。
「ミチェが磨いちゃ」
どや顔をすると、ロッドさんは鍋をひょいっと拾い上げた。
片手に私を抱っこ、もう片手に重たい鍋を軽々と持つなんて……。もしかしたらロッドさんも身体強化(攻)スキル持ちなのかもしれない。
そのまますたすたと歩いて、かまどに鍋を戻した。
「いやー、新品みたいにぴかぴかだな、すごいな、ミチェ。これだけ働けばお腹もすくよな。待ってろ、すぐに用意するからな」
と、ロッドさんはウエストポーチからいろいろな食材を取り出した。
私を抱っこしたまま、器用に皿に盛り付けていく。
ウエストポーチ……どうやら収納鞄みたいだ。割と一般的なのかなぁ?
家の中では家族も使用人も使ってなかったから全然分からない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます