お礼
そんなこんなで勉強会がスタート。
時々、先輩の手が動いているのが見える。先輩のノートをちらっと覗くと、綺麗な文字が見えた。
わ、先輩の字、綺麗。
…蓮とは大違い。
30分ぐらいたった頃、下の階からお母さんが『蓮~、飲み物取りに来てー!』と蓮を呼んだ。
『私行くよ。』
私が問題を解きながらそう言うと、徳島先輩が
『私も切りいいし蓮と行ってくるわ。乃蒼ちゃんはやってていいよー。』
と言ってくれた。
優しいな…
…じゃなくて、一ノ瀬先輩と二人っきりになるじゃん。
なんか話しかけるのも気が引けるので、黙々と問題を解いていると、隣から腕が伸びてきた。
「……ここ、間違ってる。」
先輩が指をさしたところは、私の苦手な範囲だった。
『あ、教えてくれてありがとうございます。この辺が苦手で…。』
私が苦笑いしながら言うと、先輩は
「よかったら、教えようか?」
と言ってくれた。
『え、先輩の勉強の邪魔じゃないですか?』
「大丈夫だよ。今から違う教科やろうと思ってたし。」
爽やかに笑うと、先輩は私の近くに来て耳元で
「あと、今は蒼生って呼ぶこと」
と言ってきた。
さすがに急だったので驚いて
『いや、無理ですよ…。』
と言うと、先輩は少し不機嫌になった。
「…。」
『あの、先輩?』
「…。」
『…蒼生先輩?』
「…あとちょっと。」
『…呼ばないとダメですか?』
「うん、なんか距離あるみたい。」
『……あ、おい…君。』
「君は余計。でもまぁいっか。どうしたの?」
私が名前を呼ぶと先輩は嬉しそうに笑った。
私は先輩が近くにいるだけで大変なのに、そんなことされたら心臓が持たない。
顔に熱が集まってくる。
「じゃあ、さっきのとこやろ。」
『はい、せんぱ……。』
「じゃなくて?」
『蒼生、くん…。』
「ん。」
先輩が教え始めた時、先輩の服から嗅いだことのある香りが漂ってきた。
『…あの、蒼生、、くん。』
「ん?どうした?」
先輩がノートに図を書きながら答える。
『入学式の日に私を助けてくれたのって先輩、ですか?』
「入学式…?あぁ、そうだよ。あの後、体調どうだった?」
先輩は思い出したように言った。
『大丈夫でした。あの時、助けてくれて本当にありがとうございました!』
「いや、お礼される事なんて何もしてないよ?」
『いや、お礼してもしきれないですよ。本当はすぐにお礼をしたかったんですけど、あの時は誰が助けてくれたのか分からなくて…。』
「大丈夫だよ。俺は乃蒼ちゃんが元気に学校にきてくれてるだけで嬉しいからさ。」
ほんとに先輩は優しいなぁ。
「……乃蒼ちゃん、その足首のやつって…」
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