入学式 3

みんなでぞろぞろ歩いていると体育館の前で名簿順になるように言われた。


2列に並び変わると静かになった。


さっきからすごいみんなから見られている気がする…。


しかも、こっちを見ながらこそこそ話している。


え、私何かしたっけ…?


この時、中学の頃の記憶が頭の中を駆け巡った。


あの子達に言われた言葉が耳の奥で大きく、そして強くこだまする。



『おい、ブス。なんで学校来てんだよw?ここはお前の来る場所じゃねーだろ?邪魔なんだよ。帰れよ。』


『男たらし、性悪女。』


『うざ、その顔晒すのやめてくれる?マジ公害。』



…胸が苦しくなる。


落ち着いて。今は誰もそんなこと言ってないし、そんな声なんか聞こえてないじゃん。


大丈夫。


思い出すな…。ここは高校、中学じゃない。


そう思っても震えは全然止まってくれなかった。スッと血の気が引いていくのが自分でもよくわかった。


心臓がドクドクと大きく音を立てる。


やばい気持ち悪い…。吐きそう…。


うつむいてぎゅっと目をつむる。



『…さん、…きさん、鈴木さん!』


『え?』



ぽんと肩を叩かれ、一気に現実に引き戻された。


顔を上げると周りにいた人たちは、いつの間にかいなくなっていた。



『乃蒼、大丈夫?さっきから全然反応無かったけど。なんかあった?』



楓が心配した様子で顔を覗き込んでくる。



『だ、大丈夫だよ。久しぶりにたくさんの人に会ってびっくりしたんだよ。あと入学式で緊張してたんだと思う。』


『じゃあ鈴木さん、今の放送聞いてなかった感じだね。』



杉本さんに言われた。



『え、放送?ごめんなさい、聞いてなかった。そう言えば、なんで人がいなくなってるの?』


『もー、しっかりしてよ~。』



楓に怒られる。


すると、杉本さんが教えてくれた。



『ここまで来といてなんだけど、なんか教育委員会の人たちというか来賓の人たちが、事故かなんか起きて道が渋滞してるっぽくて到着が遅れるんだって。』


『だから教室で待機するよーにってさ。』



確かにここは結構都市部にあるから、平日でも渋滞が起こることがよくある。


確かに、まだ来てない人いたような…。

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