第一章
first
エピソード0
???side
小3の夏休み、1人で公園の大きい桜の木陰に座っていると上から声が降ってきた。
『ねぇねぇ、そこの君!一緒に遊ばない?』
俺は声のする方へ顔を上げた。
茶髪のボブカットで花柄のワンピースを着ている、この辺では見たことのない女の子だった。
サーっと生ぬるい風が二人の間を駆け抜けていく。
かわいいな…じゃなくて、誰だ?俺に話しかけてくるなんて…。
驚きすぎて声も出なかった。
『あれ?聞こえてない?いや、動いたんだから聞こえてはいるか…』
一人で自問自答している。なんなんだ?
「え、いや、あの…。」
『あ、良かった〜。反応してくれた。ねぇ、遊ぼ!』
君はずっと前から友達だったかのように俺の手を取って歩き始めた。
…嬉しかった。
周りの人達は俺のことをゴミを見るような目で見てくる。
学校では汚い、臭い、気持ち悪いなどと罵られている。
もちろん話しかけてくるような人なんていなかった。
俺は嫌いだった。見た目ですべてを決め付けてくる周りの人間が。
本当の俺を見ようともしてくれない人たちが。
時々話しかけてくる奴もいたけど、そいつらはみんな罰ゲームだったり興味半分だった。
俺もほとんど反応しなかったから、すぐ話しかけてこなくなった。
どうせこいつもみんなと同じで興味半分で話しかけてるだけだろ。
…そう思ってた。
だけど、君だけは違った。
あの日から毎日俺を見つけては横に座ってきて、飽きずに笑顔で話しかけてきた。
晴れの日も、風の日も、雨の日も。
時々アイスやお菓子を持ってきてくれて一緒に食べたりもした。
今まで誰かとこうやって食べ物を共有したり、話をしながら食事をしたことがなかった。だからすごく新鮮で楽しかった。
俺は少しずつ君に心を開いていった。
そして、いつしか“こんな楽しい日々を君と一緒にずっと過ごしたい“、そう思い始めていた。
君が話かけてきてから3週間ぐらいたったころ、悲しそうな顔をしながら君は言った。
『ごめんね、学校が始まるから帰らなきゃ行けないの…。今まで遊んでくれてありがとう。』
透き通るような瞳から綺麗な涙がぽろぽろと零れ落として、地面を濡らしてしまっている。
「そう、なんだ…。こっちこそお礼を言わなきゃだよ。こんな俺みたいなやつと遊んでくれてありがとう。毎日楽しかった。」
そう言って泣き止まない君に笑いかけた。
俺とたった3週間しか過ごしていないのに、別れたくないと泣いている。驚いた。
ああ、君はほんとにやさしいな…。
そして赤い糸で編まれたミサンガをくれた。
『あのね、赤い糸は運命の人と繋がってるんだって。だから私、また???くんに会えるように願いを込めて編んだの!』
ほら、私とお揃いって言って足首に巻かれている赤と青のミサンガを見せてくれた。
「あ、ありがとう!た、大切にする!俺のこともわすれないでね?来年もまた会おうね、…ちゃん。」
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