希望
朝食を摂り、屋根裏の小窓から外を眺める。
物心ついた時にはこの屋根裏部屋にいた。母に忌み子という存在を知らされ、それが自分だということを知り。
そんなシオンにとって、本とこの窓から眺める景色だけが唯一の楽しみであった。
「今日もあの子、いるかな」
この狭い世界で数少ない、シオンが広い世界を知れる方法。日課となっている小窓からの景色を眺める。
窓から見える向かいの畑、遠目からではよく見えないが、真紅の髪に少し気の強そうな雰囲気。おそらくシオンと同年代であろうその女の子は最近になって見かけるようになった。どうやら親の仕事の手伝いをしているようだ。
「多分気のせいだと思うんだけど、最近目が合う気がするんだよね」
シオンが興味深くその様子を眺めていると、ふと少女がこちらを見ているような。そんな瞬間がある。シオンの家の庭には、それなりに大きいトノアの木があり屋根裏の小窓は少し見通しが悪い。なのだが、何故か目があっている気がする。
しばらくシオンが外を眺めていると、少女とその子の親であろう人は、畑仕事が終わったようで家へと帰っていく。
シオンはもう一つの日課である、本を手に取る。両親が誕生日の日にくれるもの。シオンにとっての希望そのもの。最初は文字が読めなくて苦労したが、月数回、母親と話す時に少しずつ文字を教えてもらった。
本には色々な事が書いてある。この世界の歴史、文化、風景。その中でも最近、特にシオンの探究心をくすぐる本があった。
——『
最初この本の題名を見た時、シオンは意味がよくわからなかった。そもそも
本には
——
「外の世界はこんなにも綺麗なのに……
村の周りにもいるんだろうか。だとしたら両親のことが心配だ。
そして、本にはこうも書かれてあった。
——邪悪な
——『
人々はこの神の御業を行使し、邪悪な
本にはこの他にも、剣術、槍術、魔術。
本に夢中になっていて気づけば夜になっていた。
「……覚醒者。僕も……いや。忌み子の僕がなれるわけなんかないよね……でも……」
頭ではわかっていても、心が諦めたくないと訴えていた。
もし……
そんな淡い希望を胸に、シオンは深い眠りについた。
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