第6話 続・夏の海辺で、人妻を寝取る。

「──嫌だわ、どうしましょう?」


 俺たちの後ろを、不審な男が付けて来ている。


「……俺に考えがあります。手を繋いで恋人のフリをして、人気のないところに行きましょう」


 あの男はきっと、こっちが気づいていないと思って、ああして後を付けているのだと思う。

 そこで俺は、人気のない場所への移動を提案した。


 そうすれば彼の行動は、どうしても目立ってしまう事になる。

 あの男も、こちらに気づかれるリスクは犯さないはずだ。


 男と一緒にいる女を、そこまでつけ回すことはしないだろう。



 俺は圭子さんと手を繋ぎ、人気のない場所まで来た。

 作戦は見事に的中し、後を付けていた男は途中で引き返していった。


 遠ざかる足音が、ようやく途切れる。



「少ししてから、向こうに戻りましょう」


「──ええ、そうね」


 そこで、俺は気づいた。


 人気のない場所で、圭子さんと二人きりじゃないか──。


 尚且つ彼女は、水着姿で肌の大半を露出している。


 煩悩が刺激されまくった俺は、あることを思いつく。



 せっかく、海に来ているんだ。

 圭子さんと一緒に運動できるような玩具でも持ってくるんだった。


 そう思っていると、俺の欲しい玩具を、能力が具現化してくれた。



 海と言えば、このアイテムだ。

 これを使って遊ぶことを、圭子さんに提案して、了承してもらおう。


 俺は玩具を見せながら、交渉を開始した。





 ──── ──── ──


 ── ─── ──

 ───  ── 



 俺は圭子さんと、ひと夏の海を楽しんだ。


 能力の効果は、まだ続いている。

 俺は圭子さんと身支度を整えて、帰る準備をする。


 圭子さんは水着姿という、無防備な状態だ。


 夏の海辺というオオカミの巣である。

 防御力の低い彼女を、一人には出来ない。


 彼女を車まで、エスコートしなければ──

 俺は圭子さんと一緒に、駐車場に停めてある車へと向かう。


 俺は圭子さんを、安全な場所まで送り届けた。

 そこで、能力の効果が切れたようだ。



 気がつけば俺は、自分の部屋に戻っていた。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 俺の名前は、藤井則宗(ふじい のりむね)。

 バスケ部のレギュラー部員だ。


 夏休みの真っ只中だが、俺は部活で忙しい──

 今も、練習試合で汗を流している最中だ。


 体育館の床が軋む音が、熱気を帯びて響く。


 今日は家族で海に行く予定だったが、直前で俺と親父と妹と姉、四人のスケジュールが合わなくなってしまった。


 そのため、計画通り、海に行くのは、俺の義理の母の『圭子さん』一人だけになった。


 皆で行けないのだから、今回の海水浴はキャンセルすれば良いと思ったのだが、圭子さんは「折角、水着も買ったのだし……」と言って出かけて行った。



 ああ、あああぁ~~。


 なんで今日、練習試合なんかあるんだ。



 ──くそうっ!

 圭子さんの水着姿を、是非とも拝みたかったのに!!



 近頃、圭子さんは家の中で、俺と距離を取るようになった。

 ひょっとすると彼女は、俺の密かな恋心に気が付いたのかもしれない。



 俺はその状況を打開するために、能力『噂話』で、「圭子さんは俺に対して、無防備になる」という噂を流したが、効果は表れなかった。


 昨日だって、そうだ。「圭子さんは、海に行くのを取りやめるらしい」という噂を家族間で流したが、効果は無く、圭子さんは海に行ってしまった。


 どうも、俺の能力を超える未知の力が、『噂話』を妨害している様な、そんな気がする。


 俺の妨害工作は失敗し、圭子さんは海に行ってしまった。

 きっと、彼女の魅力的な体は、男たちの視線を集める事だろう。


 誰かに、ナンパされるかもしれない。


 圭子さんの事だから、ナンパ男に引っかかることは無いと思うが、彼女が見知らぬ男から声をかけられる様子を想像しただけで、俺は居ても立っても居られなくなる。


 軽薄なナンパ男が、圭子さんの身体に触れようものなら……。

 それを想像するだけで、俺は……脳が焼き切れてしまいそうになる。



「──ああっ! しまった!!」


 そんなことを考えながらボールを運んでいたら、敵にボールを奪われてしまった。

 目の前でボールがするりと消え、呆然とする。



 これで今日は、三度目のスティールだ。


 どうやら俺は、このチームの「穴」だと見られているらしい。

 俺にボールが回ってくると敵チームの奴らは、ここぞとばかりに、攻めるようにディフェンスしてきやがる。


 今日の練習試合は、30点差で負けている。

 以前戦った時は、20点差で勝った相手にボロ負け状態だ。


 俺が追放したアイツ……八上義人(やがみ よしと)がスタメンだったあの時は、きっと、こいつらは手を抜いていたんだろう。

 そう思うとイラついたので、最後に俺をマークしていた相手に、肘鉄を食らわせてやった。



 そのラフプレーで「ディスクォリファイニングファウル」を取られて、俺は一発で退場処分になった。


 敵チームの猛抗議を、俺は意にも介さなかった。


 ただ、敵チームだけではなく、味方であるはずのチームメイトも、俺の事を白い目で見ていたのは気になった。



 ──なんでだ?


 別に、いいだろ??



 俺は機嫌が悪かったんだし、そんな時に、執拗にマークしてきた相手が悪いじゃないか……。

 それに、退場になったのは、終了間際だったんだ。



 ラフプレーも、戦術の一環じゃないか。


 ──そうだよな。

 俺は間違ったことなんて、何もしていない!!

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