第27話
日野くんと別れて2週間が経った。
連絡をとることはもちろんないし、帰り道に見かけることすら不思議となくなっていた。
崇人とも連絡をとることはなかったが、一度だけ学校ですれ違った。
あの日のことを思い出す。
恐る恐る崇人の顔を見ると、口パクで"カッパ"と言っていた。
私はチラッと目だけ合わせて無視した。
あの日ぶりに崇人に会ったのに、心の揺らぎはなんだか落ち着いていた。
ちょうどその頃、学校は合唱コンクールシーズンに突入した。
クラスの目標は、もちろん金賞。
4部合唱で難しい曲ではあったが、朝練や短学活の時間を使って繰り返し練習していくうちに、少しずつ仕上がってきていた。
「いい?出だしが肝心だよ?"ka"の音を、はっきり発音して歌ってー」
崇人や日野くんのことをあまり考えずにいられたのは、間違いなく合唱コンクールのおかげだった。
「じゃあ、私集まりあるからまたねっ」
凛と言葉を交わし、集合場所の体育館へ向かう。
この合唱コンクールで私はコメンテーターという役割があった。
各クラスが合唱する前に、自分のクラスが歌う曲についてや今日までどのような練習をしてきたかなどを発表するのである。
中1の頃からずっと憧れていたコメンテーター。
ワクワクした気分で体育館への道を急いだ。
体育館には各クラスのコメンテーターが集まっていた。その集団の中に尾井川くんの姿を見つけ、解散後に声をかけた。
「尾井川くん、コメンテーターなんだ。意外!」
「相原先輩もなんですね」
下駄箱へ行くまでの間、尾井川くんは自然と話し相手になってくれた。
「そういえば、…日野とは別れちゃったんですね。」
おそらく来ると思っていた話題だった。それでも久しぶりに聞く"日野くん"の名前に少しだけドキッとした。
「…うん」
「あいつ、先輩のことすごく好きでしたよ」
「…」
正直、なんて返したらいいか分からない。
「俺、ずっと2人がくっつけばいいなーって思ってて。日野から聞いた時は、叫んじゃいましたよ。笑
だから…今もどうにかならないかなって思っちゃいます。あいつ、別れた以外に特に何も言わないし、本当のところはよく分かんないけど…」
尾井川くんの言葉が胸に刺さる。
私は自分の気持ちばっかりで、日野くんの気持ちを少しでも考えたことはあっただろうか…。
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