心霊ロケで廃墟ホテルに行ったらトンデモナイ目に遭った話。
みららぐ
①
「この番組に出れば売れるぞ!」
…なんて、マネージャーさんがそんなことを言うからロケ地まで来てみたけれど。
そもそも私、本業は超絶可愛いアイドルなんですけど。
って、ロケ地に到着してから気が付いた。
「アイドル」という厳しすぎる世界に飛び込んで、はや5年弱。
普段は17歳~22歳の年齢、出身地ともにバラバラな5人のメンバーの1人として活躍する私は、先月で
これからは社会人として精一杯、自分たちのグループの存在を知って貰えるように何事も頑張るぞ!とあらゆる場所でそう言ってきたのは確かにこの私だった。
でもそれは私の中で、主に楽しいバラエティだったりドラマ、CMだったり…そういうものをやらせて頂きたいと言っていたつもりだった。
しかし、そんな中でマネージャーさんに「大きな仕事が来たぞ!」と言われて、飛び跳ねるように喜んで蓋を開けてみれば…なんとやって来たオファーはこの夏に放送される予定の「夏の特番!日本中が震えあがる心霊特集(仮)」というまさかの心霊番組だった。
この心霊特番自体は、毎年の夏にゴールデンタイムに2時間だけ放送されている超人気番組で、噂によると老若男女、色んな人たちが見ている高視聴率番組らしい。
現に去年、この番組に出た無名の芸人さんは、あれから確かに色んな番組で見かけるようにもなったし、その前の年の放送に出ていた当時無名だった男性アイドルも、あの放送を機に名前が知れ渡った気がする。
私は「幽霊」とかいう類が「マジで無理!」というほどでもないが、それでも一人でそういう番組は見れないし、怖い話自体好きだけど、聞いたあとは一人でトイレやお風呂に行けなくなってしまう。
……いや、こういうのが俗に「怖がり」だって言うのか。
目的のロケ地に到着してしばらくロケバスの中で待っていると、やがてスタッフさんから声がかかった。
「では、準備が整いましたのでよろしくお願いしまーす!」
「はい、」
私はその声を聞くと、一緒に待っていたコンビの芸人さん達と一緒にロケバスを降りた。
たくさんの背高い木々に囲まれた山の中…。
今の時刻はもう夜中の23時を過ぎたところだから、周りの真っ黒な木々がより一層不気味さを引き立たせている…。
そして目の前の廃墟ホテルの目の前まで来たら、そのあまりの不気味さに思わず足がすくんだ。
ホテル、と一概にいっても全く大きなホテルではなく、3階建ての建物がエントランスを中心にシンメトリーに両横に伸びている感じの建物だ。
ホテルの前には一応小さな噴水らしきものもあるが、もちろん現在は水なんて出ておらず、草木が生えたツルが噴水を覆っている。
そのツルはホテルのエントランス部分にも伸びており、その存在さえ今の私にはとても不気味な存在のように思う。
「うわ、確かにヤバそうやなー」
「この雰囲気はあかんわ。俺、霊感とか無いけどここは何かダメな雰囲気あるもん」
私と一緒にロケバスをおりた芸人さんの2人は口々にそう言いながら、目の前に建つその廃墟ホテルを見つめる。
私は私でそのあまりの異様な雰囲気に、言葉が出なくなった。
ホテルの窓にかかっているカーテンがビリビリに破られており、その窓ガラスもいくつか割れて地面に破片が散らばっている。
ロケ地である廃墟ホテルの話自体、さっきのロケバスの中でスタッフさんから散々聞かされていた。
何でももう30年も前に廃業したホテルだとかで、営業していた当時はそこそこ人気だったらしいが、ある年に連続して殺人事件が起こったのをきっかけに、客足は一気に遠退き、やむを得ず廃業になったそう。
しかし廃業してからこのホテルには、当時殺された客や従業員の霊が今でもさ迷っていると噂になっており、普段特にホテルに鍵もかかっていないため、学生など若い人たちが肝試しとしてよく出入りをしているらしい。
そして、その学生グループの肝試しでも奇妙なことは起こっており、複数で行っても何故か必ず1人は行方不明になってしまい、今までにももう何十人もの行方不明者がこの廃墟ホテルで出ていると言う。
…今回は番組の撮影だからそんなことは起こらないだろうけど、念には念をということで、番組側が私たちにプラスして60代くらいの霊媒師の女性の方も用意してくれた。
撮影前にこの場で一旦その霊媒師さんにお祓いをしてもらい、その様子もカメラで映される。
風で木々が揺れただけなのにその微かな音にも過剰に反応してしまい、私は思わず声が出た。
「ひぇ!?」
「いや、ビビりすぎやろ香音ちゃん。ただの風や」
「だって~」
「ほら、そろそろ行くで」
「足元、気ぃつけてな」
お祓い後、芸人さん2人にそう言われるまま、やがて私にとって初めてとなる心霊番組の撮影が、いよいよ幕を開けた。
しかしこの時の私は、この撮影中にトンデモナイ恐怖のどん底に突き落とされることになろうとは、全く予想すら出来ていなかった────…。
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