『日頃の感謝を』


「――ぷ、プレゼントですか!? そ、そんなめっそうもないですっ。お世話をするのが当たり前ですから、メガロ様はどんと構えていてください!」


 新入りの従者メイドに聞いても、やはり断られてしまった。

 性格の問題かと思ったが、どうやらそうではないらしい。


「……もしかして、ぼくが個人的にプレゼントするのって、ダメだった?」


「いえ、その……、ルールはありませんけど。感情移入すると、いざ別の場所へ異動になった時に寂しいかなって。私たちも一応、組織の一員ですから。派遣されてきているパターンなんです。ですから、そういうのはあまり頂けないかな、と。えへへ……、そのお気持ちだけで充分です。ありがとうございます、メガロ様」


 笑みを作った従者の些細な変化に気づいた。

 ぴくっと、頬が痙攣したように見えた。

 ぼくが手を伸ばすと、従者は「うっ」と顔を引こうとして、なんとか踏みとどまった。


「痛い?」

「……いえ、慣れていますから。メガロ様やご主人様を守るために、体を張って盾になることもあります。この程度の痛み、がまんできなければいけません」

「でも、恐がってる。ポーカーフェイスはまだまだだね」

「申し訳、ありません……」


 落ち込んだ従者の頬を優しく撫でる。

 こんなことをするくらいなら氷を当てた方がいいのだろうけど……

 けど、こうして、撫でてあげたくなったのだ。


「あの、メガロ様……そろそろ……」

「もういいの?」

「…………じゃあ、もうちょっとだけ……」


 もうちょっと、と言いながらも、従者のおねだりはしばらく続いたのだった。



 …おわり

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