第5話

 僕達の住んでいた星が隕石の衝突で無くなったので、別の星に移住する為、今日も宇宙船で星屑の中を航海している。


「艦長、艦橋に入室ブリッジイン


 オペレーターロボットの電子音声が響いた。


「航海長、状況は?」


 自動ドアが開くとすぐ、凛々しい声が飛ぶ。艦長は、歩き方も凛々しい。軍服のロングスカートを靡かせながら颯爽と歩いてくる。ブーツの足音が小気味良い。


「正面モニターを見てください」


「何だ? 難破船か…」


 モニターに映るのは、どう見ても木造の帆船。それが真空の宇宙空間に浮かんでいる。宇宙船には見えないが、外装だけ張り替えているのだろうか? 波に揺れるように、傾いてと戻ってとを繰り返している。


「生命反応は?」


「センサーでは探知できません」


「誰か居れば、救助義務が発生か…」


「宇宙船員法ですね」


「航海長。船外活動準備」


「了解です」




 僕と艦長は、宇宙服を着て二人で難破船に乗り込む。


「中には空気があるようです」


「よし。船内の生存者捜索を開始。警戒を厳に。小銃を絶対に手放すな」


「了解」




「艦長。操縦室にも居住区にも、誰も居ません。一度、集合しませんか?」


「機関室にも誰も居ない。入口まで戻ろう」




「艦長。この船は変です」


「お互い無事で何よりだな。それで、どうした?」


「宇宙服も脱出ポッドも全部残ったままですが……。人が居ません」


「宇宙港で係留が外れて、船だけがここに漂流して来たのだろうか? 酷い管理だ」


「いえ、妙なんです。さっきの部屋には、充電中のスマートフォンが置きっぱなしでした。机には、飲みかけの温かいコーヒーがカップに入ったままで、湯気が上がって…」


「どういう事だ?」


「さっきまで船員が居て、急に居なくなったみたいです。でも、宇宙服無しじゃ外になんて…」


「確かに不思議すぎる。あっちの壁には、打ってる途中の呪いのわら人形があったぞ。まるで、さっきまで金づちで叩いていたみたいな…」


「えっ?」


「えっ?」


「…」


「…」


「艦長?」


「引き上げだ。ここに生存者は居ない。居なかった…」


 僕達の宇宙旅行は、今日も続く。

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