第10話

「…お前の脚、ぶっといのぉ」


「うるさい!」


 ミサキがほうったクッションが、アキラの顔面に見事に命中しおった。


「なにすんじゃー!痛いじゃろうが!」

「アンタが要らんコトゆうけぇじゃ!」

「ほんまのことゆうただけじゃあや」


 アキラは口をとんがらがして言い返す。


「アキラぁいっつも“でりかしー”がないけんいけんよー。ぴっちぴちの女子高生に向かって脚が太いやらゆうて…あ、」


 ミサキは急に口をつぐむ。


「…なんじゃ。なんで黙るんじゃ」

「知らん。もうええけん」


 はぶてた顔で漫画を読むミサキ。


「なんな。逆に気になるじゃろが。ゆえ」

「ゆわん」

「ゆえや」


 アキラがすごんでみせたら、ミサキはちっとの間だまっちょったが、こまい声でつぶやいた。


「…アキラ、こないだ足のほっそい子と歩きよったじゃろ」


「へ?なんの話じゃ?」


 アキラがほーけた顔で答えると、ミサキは漫画をほうり投げてベッドの上にあぐらをかいた。ぶりぶり怒った顔をしとる。


「とぼけんさんなや。こないだの日曜日、可愛げな女の子とアリスんとこ歩きよったん、ウチ見たんじゃけぇ」


「日曜…?あっ」


 なんか心当たりがあるらしゅうて、ふが悪ぃ顔をするアキラ。


「あ、ありゃ、なんでもねぇわいや」


「彼女なん?付きおうとるん?かしゆかみたいな、すらーっとした足でから、顔もアイドルみとぅな可愛い子じゃったね。そりゃあ、あーゆー子を見とったら、ウチの足なんか大根じゃろう。ほーよねぇ。えーえー」


「お前、なんではぶてよんな。しかもありゃあ別に…彼女やらそうゆうんと違うけぇ」


 アキラは鼻の頭をぼりぼりかぐる。


「彼女じゃないんじゃったら、誰なん?」

「…ナオトの彼女の友達」

「ナオトゆうたら、中2ん時おんなじクラスにおった中島君?」

「おう。こないだ、リトルリーグん時の仲間でカープ見に行ったんじゃ。ほしたらナオトが彼女連れてきとってから、その彼女が、観音に通っとってんじゃけど、ウチの友達が基高の男の子と付き合いたいゆいよる、ゆうて。ほしたらナオトが、ほいじゃあダブルデートしよぉでぇ、ゆうて、勝手に盛り上がってからのぉ、ワシの都合も聞かんで、日曜に福屋の前に集合じゃーゆうてからのぉ」


 アキラは顔をしかめる。

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