第1話

「おい、待てよ!」

帰りかけた私を、尚輝が呼び止めた。

「…なん?」

私は足を止め、振り返った。

そのとたん、私は尚輝に、キスされた。


***


尚輝と初めて会ったのは、半年前。

高校2年の春、私と同じクラスに転入してきたのが尚輝だった。

都会からの転校生。ゆるくウェーブのかかった長めの茶髪に、グレーのチェックのブレザー、中指と薬指にはめたシルバーの指輪…そんな格好で、尚輝は憮然として黒板の前に立っていた。そんな尚輝を、私達は別世界の生き物を見るかのように、ぽかんと口を開けて見ていた。

瀬戸内海に面した田舎の高校にとって、それはちょっとした事件だった。休憩時間になると、他の学年の生徒までもが『都会から来た男の子』の姿を覗きに来たものだ。

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