第36話 娼館ジャキバスの館

 街は大混乱。

 といっても裏に繋がりのある奴ら限定だが。

 闇ギルドを潰した時に、パニッシャーは闇ギルドと関係あるなしに、犯罪組織を片っ端から潰していた。

 チンピラ達は上がいなくなったので暴走気味。

 チンピラがまとまって、犯罪組織や闇ギルドを復活させたりするとめんどくさいので、チンピラをパニッシャーが捕まえて、ノワールに引き渡した。

 スリの集団なんかも、どうように捕まえて、引き渡した。


 闇ギルドの情報にはそういうチンピラ組織や、スリ集団などの情報もあったからな。


「何だか、治安が良いのよね」

「ええ、物取りの事件が今日は1件もないって守備兵さんが、言ってたわ。でも代わりに、かなりの数の犯罪者が捕まったようね。守備兵さんが大忙しでぼやいてたわ」


 街を歩いていたら、そんな声が聞こえた。

 茸の楽園の出入り口でセインティア達を待つ。


「セインティア、護衛のノワールメンバーを仕事完了としたいんだけど」

「構わないけど。リリーと、チェリと、ユーカがいれば、茸の楽園の制覇は私達だけで、そのうちにできると思う。作ってもらったメイスが凄いから。ところで護衛が必要なくなるのは何で?」

「闇ギルドが潰れたらしいよ。パニッシャーの手によって」

「えっ、ほんと? あの悪名高い闇ギルドが」

「まあね」


 パニッシャーのクランハウスに行った。


「マスター、ちょっと問題が」

「何?」

「犯罪組織を潰したのは良いのですが。そういう組織が運営してた娼館が多数ありまして。所属してた娼婦に放り出されたら困ると言って泣きつかれました。前は就職をなんとか世話してたんですが、世話した娼婦が仕事場に馴染めなくて戻ってきた人も多数います。今の数の就職の世話をするのは無理です」

「奴隷ではないんだな」

「娼婦の違法奴隷は昨日マスターが眷属にして、パニッシャーの新しいメンバーになってます。奴隷ではない娼婦ですね」

「なんとか働き口を世話してやりたいところだが」

「娼婦以外の仕事はできないと言ってます。客には顔を覚えられているので、まともな所に行っても過去が追いかけてくるそうです」


 そういう理由で世話しても帰ってきてしまうのか。


「うーん、必要ないのに眷属にはしたくないな」


 さて、どうした物か。

 まともな職についてもあんた娼婦だったよなと言われると、仕事をするのにかなり不味いよな。

 かと言って、娼館を運営するのはちょっと。


 こういう施設が必要悪なのは知っているけど、それにしてもな。

 性犯罪が増えるのもよろしくない。

 国に運営してほしいところだ。

 無理だよな。


 邪技で一発解決といけば良いんだけど。

 ああ、そうだ。

 淫夢って邪技があったな。

 これを上手く使えないかな。


 邪臓がない人間に邪技を貸与しても問題ないだろう。

 宿に娼婦をひとり呼んだ。


「技能みたいなのを授けたい。危険はないと思う。金貨10枚でどうだ?」

「やる」

「【下級邪技貸与】。これで淫夢って技が使える。気持ちいい夢を見せてやれるはずだ。どうだ?」

「異常はないみたい」


 俺の予想が正しければ、あれを使えば邪技が発動できるはずだ。


「ダーク、こんな所に呼び出してどうしたんだ」

「チャビー、待ってたよ。黒い邪石は持ってきたよな」

「ああ、何に使うんだ?」

「まあ、見てろ。この石を握って淫夢を発動してみろ」


 娼婦に石を渡して、そう指示した。


「お兄さん、どんな人が好み」

「リリーに決まっているよ。告白して現在、承諾待ち」


「じゃあ、彼女を思い浮かべて」

「うん」

「【淫夢】」


 チャビーがベッドに寝て眠ったようだ。

 娼婦はチャビーの下半身の衣服を脱がした。

 これ以上は見なくて良いな。


「終わりました」


 しばらく廊下で待っていたら、部屋の扉が開いて、娼婦がそう言った。

 部屋の中に入る。

 チャビーは恍惚としてた。


「俺、リリーとエッチしたよ」

「夢でだがな」

「気持ち良かった。スッキリした気分」


 まあ、実際にスッキリしたんだろうな。

 実験が成功したな。


「淫夢の感想は?」


 娼婦に訊いてみた。


「良いです。エッチって体力を使いますから、これなら一晩でたくさん稼げます。妊娠の心配もないですし。仕事としては事後に体を綺麗にするだけですね」

「よし、これで行こう」


 あぶれていた娼婦全員に邪技を貸与する。

 娼館は娼婦のリーダーを作って、運営させることにした。

 恐怖の邪技も貸与する。

 これで用心棒はあまり要らないな。

 娼館ひとつにパニッシャーをひとり派遣すれば十分だろう。


 娼館の名前が、ジャキバスの館になった。

 王都には1号店から、16号店まである。


 地方の犯罪組織の娼館もジャキバスの館に変えていくとするか。

 普通の客は、娼婦が相手をしてくれたと思い込んで帰って行く。

 値段がぼったくりではなくなったので、利用するひとの評判は良い。


 娼婦も暴力とか振るわれなくなったので、楽になったと言っている。

 客の中には行為の最中に首を絞める奴なんかいるそうだ。

 間違えたら死ぬからな。

 そういう危険がなくなったのか。


 セインティアには話せない話だな。

 だが、人助けにはなった気がする。


 深夜、ブルタス公爵邸の前に立つ。


「【邪神空間】」


 ブルタス公爵の脳の血管を斬る。

 これで終りだ。

 病死と判断されるだろう。


 チャビーはジャキバスの館に嵌った。

 夢でのリリーとのエッチを楽しんでいるようだ。

 リリーにばれたりしないと良いが。


 邪気クリーナーと邪気結界は売れている。

 邪気に染まった邪石も確保出来て良いことだ。

 邪石の邪気は、かなり有用だな。

 邪技の燃料にもなるし、死霊兵の強化にも使える。


 あればあるほど良い。

 チャビーのお金もかなり貯まったようだ。

 リリーに金のネックレスをプレゼントしたのを知っている。


 リリーにジャキバスの館のことを薄っすらと感づかれたらしい。

 プレゼントで誤魔化したようだが、逆効果じゃないだろうか。

 リリーにチャビーの浮気調査を頼まれたチェリとユーカは、ジャキバスの館のことを知っているので、チャビーは浮気してないと言ったようだ。

 淫夢は浮気に入らないとチェリとユーカの常識ではそうなっているみたい。


 俺としては事後の清掃とか、下半身を見せたということで、かなり黒に近い灰色だと思うんだが。

 全裸で添い寝する彼女達の常識ではそうなんだろうな。


「ダーク、チャビーがちょっといけないことをしているらしいけど、あなたはやってないでしょうね」


 セインティアに問い詰められた。


「チャビーが何をしてるか知らないけど、俺はやましいことはしてない」

「本当みたいね」


 ちょっと冷や汗。


「何かプレゼントしようか」

「急に怪しいわね」

「チャビーがさ、リリーにプレゼントしただろう。リリーが羨ましいとか思ったかなって」

「じゃあ、金のネックレスを。リリーより高いのでないと許してあげない」


 友達でも張り合うんだな。

 マウントを取りたいのだろうか。

 たぶん、リリーをかなり羨ましいと思っていたんだろうな。


 ネックレスを買って、邪気で染めてから、魔力に変換した。

 暗い所では魔力の光で、光るネックレスだ。


「嬉しい。世界にひとつだけよね」

「ああ、ひとつだけだ」


 まだ、邪神教本部の情報は集まりきってない。

 明日は、久しぶりにドラゴンダンジョンに行こう。

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