新人ダンジョン探索者、最強の重力魔術ですべてを砕く
@kaisenndonn
第1話 プロローグ
世界が変わった日、斎藤はまだ普通の高校生だった。
朝、通学電車に揺られながら、斎藤はいつもと変わらない日常を送っていた。
イヤホンから流れる音楽、SNS、学校の課題。
——そんなある日、新宿は日本から消えた。
最初は事故か何かだと思った。
ニュースでは「新宿駅で大規模な地盤沈下が発生」と報道されていた。
だが、それは"ただの事故"ではなかった。
"穴"が開いたのだ。
地面にぽっかりと空いた黒い闇。
数秒のうちに無数の人々を飲み込み、ビルが崩れ、交通網が遮断された。
そして——
そこから"何か"が這い出してきた。
それは後に"魔物"と名付けられることになる存在だった。
最初に現れたのは、体長5メートルの巨体を持つ"オーガ"。
警察が駆けつけ、特殊部隊が出動し、軍が動いた。
——それでも、新宿は守れなかった。
そして、世界は変わった。
東京、大阪、名古屋——
次々と都市の中心部が"穴"に飲み込まれた。
政府は封鎖を試みたが、遅すぎた。
魔物が地上に溢れ、秩序は崩壊し、街は壊滅した。
——その後、日本は"ダンジョン国家"と化した。
しかし、混乱の中で発見されたものがある。
それは"魔石"——ダンジョンの奥深くに眠る、未知の結晶。
魔石には、"人を超常へと導く力"が宿っていた。
人々は魔物に抗う為、二つの術を編み出した。
◆
【スレ】東京、大阪、北海道……ヤバいエリアを語るスレ【魔境】
1 :名無しの探索者: やっぱ東京は魔境だな
2 :名無しの探索者: だな
3 :名無しの探索者: 第一エリアですでにCランク以上の魔物が出るエリアなんて、東京と大阪くらいか?
4 :名無しの探索者: 北海道と京都もだな
5 :名無しの探索者: でも北海道と京都はこの前、大規模討伐が入ったから、第一区間の重度コアはもう残ってないぞ
6 :名無しの探索者: じゃあ、やっぱ東京と大阪か
7 :名無しの探索者: 今じゃ大体のランカーがここに集まるしな
8 :名無しの探索者: ……いや、お前ら一つ忘れてるぞ
9 :名無しの探索者: 何を?
10 :名無しの探索者: どこだよ
11 :名無しの探索者: もったいぶらずに言えよ
12 :名無しの探索者: 群馬
13 :名無しの探索者: ……ああ
14 :名無しの探索者: 確かに、あそこは魔境だ
15 :名無しの探索者: ていうか、群馬の情報って全然入ってこなくね?
16 :名無しの探索者: あそこは魔力濃度が高すぎてかなり早い段階で封鎖されたからな
17 :名無しの探索者: あのバカみたいに高い壁な
18 :名無しの探索者: そもそもあの壁って出入口あるのか?
19 :名無しの探索者: 探索チャンネル見た限りなかったな
20 :名無しの探索者: 出入口なしの巨大な壁……
21 :名無しの探索者: 入ったら最後ってことか
22 :名無しの探索者: そういえば、群馬って"封鎖される前"の探索者、全員行方不明になってるんだろ?
23 :名無しの探索者: え、マジで?
24 :名無しの探索者: 入った奴、誰も戻ってきてねぇって噂は聞いたことある……
25 :名無しの探索者: やめろよ、冗談にならねぇ
26 :名無しの探索者: でも最近、ちょっと気になる配信があったんだよ
27 :名無しの探索者: どんな配信?
28 :名無しの探索者: http://**********
29 :名無しの探索者: グロ注意
30 :名無しの探索者: うわ、なんだこれ
31 :名無しの探索者: ヤバいやつ?
32 :名無しの探索者: ヤバいかどうかで言ったら、めちゃくちゃヤバい
33 :名無しの探索者: ……これ、群馬じゃね?
「……」
そんなスレのやり取りを、スマホで見つめる男がいた。
「……なるほど。これが探索者というものか」
黒髪の少年、神崎零。
"最強だが、無名にも等しいこの者"は、目の前にそびえたつ壁の中へと、人知れず向かった——。
◆
「クソッ……クソッ……!!」
泥と血にまみれながら、斎藤は全力で走った。
五人一組の探索班。
その"余りもの"——ハズレ班に回された斎藤一馬は、血まみれの仲間たちを振り返る。
(こんなところで終わるのかよ……)
「後ろの奴らはどうした!?」
「決まってんでしょ!! 全員喰われたわよ!!」
20代の女性探索者、四宮が叫ぶ。
彼女の顔は恐怖で引きつり、唇は震えていた。
最初は50人いた。
だが、もう10人も残っていない。
そして、戦場の中心には——
10メートル級のミノタウロス。
「下がれ!! 俺がやる!」
Bランクの探索者 八城 が前に出た。
斎藤たちとは違う班――そのリーダー格の男だ。
「いくぞ……! 刻印術——《焔の剣》!!」
刻印術。
それは、魔石を体に刻み込み、"解放"することで発現する超常の力。
「おおおおおお!!!」
八城の剣が、炎の刃となってミノタウロスを襲う!
——が。
ズバァッ!!!
斬撃は確かに直撃した。
なのに——
「……え?」
ミノタウロスは、微動だにしなかった。
八城の剣は、確かに魔物の肉を裂いた。
だが、"浅すぎる"。
(そんな……!! Bランクの刻印術が通らねぇだと……!?)
「嘘だろ……!」
グギャアアアアアアッ!!!!
ミノタウロスが咆哮し、拳を振り上げる。
「チッ……!!」
八城が即座に距離を取る。
だが——
ドゴォォォンッ!!!!
ミノタウロスの拳が八城を直撃する。
「ぐっ……!!」
八城の体が、木々をなぎ倒しながら吹き飛ばされた。
「……が、ハ……」
八城を無力化したミノタウロスが、次々に彼の班の者に襲いかかる。
「う、嘘だろ……!?」
「た、助けてくれえええええええええええ!!」
仲間たちが叫ぶ——
バキィッ!!!
次の瞬間には、ミノタウロスの巨体に"押し潰されていた"。
「っ……!!」
——そして、かろうじて生き残った者が斎藤たちに、最後の言葉を残す。
「逃げろ……! 生き残れ……!!」
——瞬間、斎藤は全力で駆け出した。
(クソッ……!! こんなの、勝てるわけねぇ!!)
生きるために、ただ逃げる。
だが——その時。
視界の端に、"四人の影"が映った。
20代の女性探索者、四宮。
10代半ばの姉妹らしき少女たち。
フードを深く被った、年齢不詳の少女。
(……置いて行くか?)
——いや。
(ここで逃げたら……もう二度と、俺は自分を誇れなくなる)
斎藤は歯を食いしばった。
かつて、斎藤は探索者のエリートだった。
だが、"天才"を見た瞬間、全てが崩れた。
魔石を手にしても、刻印術を極めても、結局"才能"には敵わなかった。
だから落ちぶれた。だから今、"ハズレ班"なんかにいる。
(……でも、それでも)
目の前で震える4人の女性たちを見て、斎藤は剣を握り直した。
「……おい、四宮」
「……え?」
「お前ら、逃げろ」
「……え、でも……」
「ここから南に、使われてねぇ下水道があるはずだ。そこにこいつらを連れて逃げろ!!」
「で、でも、それじゃあ貴方が……」
「時間を稼ぐ!! いいから行け!!」
斎藤は剣を抜き、ミノタウロスの前に立ちはだかった。
四宮は数秒躊躇ったが——
「……ありがとう!!」
少女たちの手を引き、駆け出した。
——そして、斎藤は駆けた。
「刻印術——《疾風》!!」
人ならざる速度で、ミノタウロスの右目を、切り裂く!!
「ギャァァアアアッ!!」
だが——
「ッ!? 重っ……!!」
斎藤の剣は、"途中で止まっていた"。
(マジかよ……!!)
このミノタウロスの肉は、異常に"硬かった"。
普通なら斬り裂けるはずの刻印術が、貫通しきれなかった。
——そして、次の瞬間。
ズゥン!!!!
ミノタウロスの巨大な足が振り下ろされる。
「ぐあっ……!!」
斎藤は、吹き飛ばされた。
木に叩きつけられ、肺の空気が一気に抜ける。
「がっ……は……」
(ダメだ……動けねぇ……)
視界がぼやける。
意識が遠のく。
——だが、その時。
ズンッ!!
ミノタウロスの拳は途中で止まっていた。
まるで、空間そのものが歪んだかのように。
ミノタウロスの拳が何かに阻まれていた。
斎藤は、意識の朦朧とした頭で考える。
この魔術を、知っている。
「お前は――」
「動かなくて良い」
この場にそぐわない、冷静な声が響く。
ミノタウロスと斎藤の間に、一人の少年が割って入るように立っていた。
見間違えるはずがない。
かつて、自分の鼻っ柱をへし折った存在。
「……ッ! お前……!」
少年は斎藤の言葉に対し、特に反応を示さなかった。
ただ、手をかざし——
「――潰れろ」
その一言で。
ミノタウロスの全身が、瞬時に真下へ叩き潰された。
――ズゥンッ!!!
森全体が震えるほどの衝撃。
10メートルの巨体は、骨も肉も関係なく、ただの"平面"となった。
血と肉片が地面に染み込み、もはや何だったのかすら判別不能な状態。
静寂。
少年は、小さく息をつきながら、潰れた"何か"を見下ろした後、斎藤へと視線を移した。
「――相変わらず、いつも死にかけてるな」
――トクン。
数年前と同じ感覚が、斎藤の胸を締めつけた。
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