百キ夜行物語~短編集
Obi
第1話 夜行
序
宵闇に畏れと嗤い、虚無と狂喜が交錯する。
忘れられぬ為に、畏れられる為に、今宵もあやかしは舞う。
一.
古都の闇に妖が舞う。恐怖と歓喜、狂気と狂喜が夜を裂く。
「嗚呼、愉快也…厭、悲哀哉。」
蛇の目傘が嗤う。妖達は己の存在証明に狂乱し、踊り、吼え、飲み尽くす。
けれどその熱狂の奥には、ぽっかりと開いた虚無。
消える為に騒ぐのか、生きる為に暴れるのか。
妖の足跡は、闇に溶けて消えていく。
「所詮この世は栄達と零落。」
狂骨が呟く。かつての貴族の誉れも、今は朽ちた骨。
世に名を刻んだ者も、名と共に風に散る。
百キ夜行とは信仰と畏れ、権勢と衰退の縮図。
「人の噂も七十五日。皆、忘れ去られる。」
それでも、彼らは進む。
誰かの記憶に残るために。誰かの畏れとなるために。
黎明 妖の影も薄れ、静寂が訪れる。
けれど、その足跡は消えない。
「畏れが尽きぬ限り、我らは消えぬ。」
闇の奥、また次の夜を待つ者たちがいる。
百キ夜行、それは祈り。
忘れられぬ為に、恐れられる為に、今宵も妖は歩む。
朝日が昇る。彼らの宴は終わり、また始まる。
――了
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