【完結済み】九龍城寨図書館と見習い司書の事件簿~忘れられたページと願いの言葉~

長谷川ひぐま

プロローグ

■プロローグ


 日本にある世界最大の違法図書館……『九龍城寨クーロンじょうさい図書館』。


この場所が出来た経緯は誰にもわからない。

戦後の闇市にあった貸本屋が増築に増築を重ね、現在の五キロ四方に渡る図書館都市を形成していった……とも言われている。


 あるいは、不法移民たちが勝手に立てたアパートや雑居ビルが派生して、当時娯楽のなかった住民同士が本を貸し借りしているうちに、その一部屋一部屋が図書館となっていった――なんて都市伝説もある。


 正確なところは誰にもわからない。


 だが、この場所はいつの間にか世界最大の蔵書数を誇るようになっており、所狭しと並んだ図書館群は、かつて中国に存在した不法占拠都市になぞらえて『九龍城寨クーロンじょうさい図書館』と呼ばれるようになっていた。


 お酒の本だけを集めた図書バー、宗教的な禁書のみを扱う六畳一間のアパート、届かなかった誰かへの手紙を集めた秘密の巨大書庫……ここでは普通ではない図書館と、常識では考えられない蔵書が数多く存在する。


 唯一、ここにない本はこの世に存在しない本だけ。


 九龍城寨クーロンじょうさい図書館は、諦めさえしなければ一万六千を超える図書館の中から、必ず自分の探している本に出会えるのだ。

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