9話 死体

花音は、住んでるアパートの前にある公園の中で、死体で放置されていたらしい。

真っ裸で晒されていた。まさに辱めるように。


また、犯された形跡があったみたい。

そして、膣にナイフを入れられ、そこからお腹へと割かれていたんだって。


警察は、まず男性関係を調べたけど、容疑者は出てこなかった。

そこで、女性関係を調べたら、うらみつらみが出てくる出てくる。

警察は、女性が男性を使って犯行に及んだと考えたみたい。


男性だったら、こんな辱めるようなことはしない。

よほど、汚い死に方にしたかったのだろうと。


私のところにも刑事が来た。

その時に、初めて花音が殺害されたと知ったの。

でも、1カ月程度の付き合いだったから、よく知らないと答えておいた。

男性だった頃のことまで話す必要はないでしょう。


花音のお葬式には行かなかった。

瑠香に聞いたけど、瑠香も行かないって。

多分、多くの男性だけに囲まれたお葬式だったんだと思う。


花音の会社は男性コンサルタントが継いだらしい。

でも、最近は経営状況が悪いと聞いた。


結局、警察では犯人の特定ができなかったみたい。

あまりに花音のことを恨んでる女性が多くて。

この事件は報道されることなく終わった。


花音は誰に殺されたんだろう。

たしかに、殺すぐらいの恨みを持つ女性はいたと思う。

長い時間、花音と一緒にいたなら。


花音の本当の姿は男性のときには全く気付かなかった。

女性のときも、花音の残虐さに気付いたのは、ごく僅かだったのかもしれない。

花音とわずかな時間しか過ごさなかったから。


花音の女性への蔑視はひどかったと瑠香は言っていた。

花音は、他の女性に、自分の汚らしさを見てたんじゃないかしら。

そんな女性を攻撃して、自分の汚らしさを否定したかったのかもしれない。


こんな体になって思うことがある。

花音は男性になりたかったのかもしれない。

汚い女性から抜け出したかったんじゃないかって。


女性になって、女性のことが信じられなくなった。

女性のいやらしさ、汚さも知った。

瑠香以外の女性に心を許せると思った人はいない。


逆に、男性のステキな面も知った。

本当に、一方からしか見えないことが多いんだってわかったの。


明日、朝起きたら、男性に戻って笑っているなんてこと、ないかしら。

ないわね。夢じゃなくて手術でこうなったんだから。


もうこの体になって、あの頃のように男性の体に戻ることはできない。

もう女性として生きていかなければならないの。


私は、死ぬべき状態で命を与えてもらったんだから、お礼をしないと。

そう、周りに親切ができる人になろう。


どんな人でも、理由があって、他人に悪いことをするんだと思う。

花音もそうだったんだと思う。。

だったら、その理由を知り、暖かく接するのがいい。


そんな事を考える日が続くなか、私は、自分の家の前で時間が止まったの。

玄関の前に、酔った隆一が丸くなって座っていたから。

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