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「センパーイ。まだ怒ってんの?」




当たり前にあたしがあの部屋に戻るはずもなく、バイトも上がりってことで帰路につくあたしの後ろ。



後ろからついてくる、鬱陶しいヤツのことは全力で無視。




「だってしょうがなくね?センパイまじで辛そうだったし、むしろ感謝されても良いくらいだと思うんですけどー。」



確かに今日はあたしの失態だけど、年下のコイツに助けてほしいなんて思ってない。




「だいたいあの暑さでずっと我慢してるとか、センパイ馬鹿なの?」




ましてやコイツに馬鹿なんて罵られる筋合いは微塵もない。




「本当、手ぇ掛かる。」




お前に掛けてもらう気も手も不要だっての。




「だいたいこのクソ暑い日に、なんでその格好なんだよ。」




そんなのアンタに関係ないでしょ。


 


「どう考えたって、夏に着る服じゃなくね?」




そんなこと言われなくたってわかってる。




「センパイさ、もしかして気にしてんの?」


「だったら悪い!?」




気付いてるんだったら一々聞いてこないでよ!




「何か文句でもある?気にしてても気にしてなくてもあたしの勝手でしょうが。それに対して文句を言われる筋合いもないし、言われる意味もわかんないんですけど。」


「意味わかんないってことはねーだろ。」


「はぁ?」


「つーか、何でわかんないの?」


「何言ってんの?意味わかんなすぎでしょ。あたしのことに口出ししてくるとか。」


「口出しって何それ。超他人みたいな言い方。」


「だって他人だし。」


「それ、マジで言ってんの?」


「――だから痛いんだってっ!」



掴まれた腕に渾身の力が込められてるってのがわかるから、余計にそこが痛い。


手加減って言葉知らないんじゃないのってくらいの馬鹿力だから敵うはずもない。




「マジで言ってんのかって聞いてんだけど。」




絶対に振り返らないって思ってんのに、勢いよく引っ張られる体は抵抗も虚しく引き寄せられて―――…




「志乃センパイのこと好きだって言ってんのに?」




寸前で流れた涙が、来栖の胸元に吸い込まれていった。








……本当、最悪。



泣くつもりも、泣きたい気持ちすらもなかったのに。



抱きしめられてるって、わかってるのに引き剥がせないのは、今の顔を見られたくないだけでほかに意味なんてない。






―――なにもかも最悪だった、夏休みが始まる前から。

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