ぼくのエチュード

深海くじら🐋『ダン神』連載中💕

プレティーン・カノン

――1――

 求めよ。さらば与えられん。

 きみはこの言葉を教会で聞いた。夏休みの帰省先。弟と二人、四つ年上の従姉に誘われて。マタイ伝の七というのがゲームの呪文みたいだったけど、小二のきみにはよく意味はわからない。ただ、ステンドグラスに照らされた従姉の横顔を見て、来てよかったって思ったんだよね。


――2――

 いつからだろう。きみが弟と遊ばなくなったのは。

 きみらは小さな頃から一緒だった。寝るのも一緒、起きるのも一緒。好きな食べ物もゲームの好みも。だって双子だからね。

 最初に変わったのはあのとき。小二の終業前にきみは車に跳ねられた。ふた月遅れで進級したきみが見たのは、クラスで人気者の弟。


――3――

 転校生が教室に馴染んできた。ピンクのデニムスカートがトレードマークの涼しい目をした女の子。身長普通で脚も早くないきみは、勉強こそできるけどモブのまま。彼女はあっという間にカースト上位。自信が無いから告白なんて夢の夢。中学になったら勇気出すと決め、きみは密かにパワーリストを買った。


――4――

 今日の体育は水泳。きみは苦手じゃないけど得意でもない。でも背泳ぎならいけるだろ。温水プールで特訓してたから。

「今日は平泳ぎでタイム測るぞ」

 あれ、話が違う。結果は散々。ジタバタするきみの隣を蛙のように過ぎていく双子の弟がプールサイド女子の声援をひとり占め。むろん、あの娘の賞賛も。


――5――

 卒業式。ピンクのデニムも今日で見納めだ。結局、小学校にきみのステージは無かったね。噂を耳にして受験に挑戦したきみだけど、満開の彼女をよそに、きみの桜は散り終えた。まあ元気出せよ。別に人生終わったわけじゃない。冬の計測でも、千五百なら悪くないタイムが出てたじゃないか。次行こう、次。

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