第7話:ディール
スジャータから話を聞いた翌日から、さっそく
私は
自室に戻ってから、テレビを付けるとちょうど地球で言うゴールデンタイムであったが、番組表を見ても特番的に大々的に宣伝されている番組がちょうど開始するところだった。チャンネルを合わせて画面に注視する。
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「あっ、鳥だ、飛行機だ、いや、スペルマンだ!」白いマントをなびかせて颯爽と空を飛ぶ超人
ただ、必勝のヒーローにも弱点はあり、ある刺激トリガーがないと必殺のスパーマ光線を発射できないことであり、その点、完全一人称で戦えるものでもなかった。地上の女性隊員が必ず痴情対応をする必要があり、スペルマンがスパーマ光線を発射するためには、眉目秀麗な女性隊員の文字通りの一肌脱ぐ献身的な、いや犠牲的精神と行動が求められており、放映回によっては、より大胆な痴態を晒すことによって、スパーマ光線の早期発射を促したり、男性隊員が女性隊員の服を脱がせることでより刺激要素を増加させるなど、バラエティーに富んでいるとのことであった。この放送内容を追認すべく多くの国で、男性が女性の肌着を剥ぎ取ることも、緊急措置として合法行為として認められる法改正が行われたとのことは驚きであった。今回は特別2時間枠拡大スペシャルということで、脱がされることでスパーマ光線のトリガー役を務める痴情対応地上女性隊員と、自ら脱ぐことでそのトリガー役となる痴情対応地上女性隊員が両方、出演していた。目を凝らしてよく見れば、見たことのある顔のそれぞれ美しい顔立ちをした役者が演じており、脱がす役柄の男性俳優にも見覚えがあった。番組終了時のテロップで役者名を確認してみれば、果たして、「Est Villaggio Saee」「Old February Millet」「Knight is philosophy.」の役者名を確認することが出来た。
「あいつら、今度はこんなところに転身してやがったのか!?」時の流れの速さに思わず驚嘆の色を隠せず、画面を暫く凝視し続けてしまい、あやうくまた眩暈の症状を発症するところだった。
スーパーマンならぬ、スパーマン/スペルマン(国や人、その時の気分によって微妙に区々に発音が異なる)が一国だけでなく、惑星全体で一大ブームを巻き起こしているとは、誠に驚きと呆れを通り越して信じがたい光景ではあったが、過日、この直射ビームの発射未遂事件が、結果的に、本惑星における世界大戦を未然に防いだという美談がベースにあるとのことなので、惑星全体を絶大なる人気が覆い尽くしているとのことである。我が惑星でも、牛や豚を食すことがエリアによって禁忌(タブー)行為として、隣国どおしで違っていたり、土下座は最大の恥辱とする国もあれば、日に何度も衆目の中で頭を擦りつけて祈りを捧げるのが美徳とされる国もあるなど、もはや、所変われば品変わるの世界観の違いなので、そう受け止めるしかない。スパーマ光線発射に向けた一連のプロセスは、「スパーマ交宣」・「スパーマ好羨」との尊称があるのは、毎回、スペルマンと女性隊員との発射に向けた協力プロセスで交わす宣言、みんなが好色羨望の眼差しで、このスパーマ光線発射に向けた一連のプロセスを固唾を飲んで見守り、楽しみにしているからであった。私などは、なぜこのプロセス中に怪獣はスペルマンを攻撃しない?と疑問視してしまうのだが、この惑星の人々はこのプロセスを神聖視しており、特に疑問は差し挟まず、当然視しているようであった。放映はもちろん各国ゴールデンタイムとなっている。必勝のヒーローは、なんと、この番組内容でありながら、子供にすら人気を博しているとのこと。この惑星にはR指定などの基準はないのであろうか?
女性の憧れは、この女性隊員チーム46~48名の中に入ることであり、選良選抜意識の強いこの国では、雑誌などに露出される選抜メンバーE、そして、テレビ等にも映ったり歌も歌ったりするαユニット入り、さらにはセンターを飾ることが何よりのスターダムへ駆け上がる最高の階段であり、歴代スパーマンとセンターアイドルとのビッグカップル誕生&ゴールインは恒例行事となっていた。テレビを見ていて分かったことだが、CMも全て「ホワイトフライデー」のスペシャルウィーク関連のものばかりで、結局はこれもスパーマンのイメージカラーと結びついているようで、スパーマン効果で巨額の経済が動いているようであった。
これが惑星“エーアデ”での現在の教育観・流行の文化・経済の流れであり、もはや、惑星全体での思想観や物事の出発点を成しているようなので、地球文化との違いとして丸呑み理解する他ないようであった。
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いよいよ、惑星“エーアデ”側とのコスモクリーナータイプE譲渡を巡る条件交渉が始まった。ディールはやはり
スジャータからの惑星“エーアデ”再訪要請と地球救済の申し出は受けていたものの、無償提供であるかどうかも分からず、とりあえず、地球防衛軍C5トップからは100億コスモオイロという破格の予算枠を与えられていた。地球サイドとしては、時間的猶予はなく、また、事前に無償提供なのか、それとも何か見返りを求めてくるのか、どんなカードを切ってくるかも分からなかったが、地球の存亡には代えられないということで、時間短縮のために破格の予算枠が地球防衛軍から認められていた。
いざ交渉のテーブルに着いてみると、
「昨日は、『スパーマン』の特別版の放映日だったが、Mr.Aoyamaはご覧になったか?それと、ちょうど『ホワイトフライデー』も重なって、白一色の一日となった。それもこれも、私のベーノル平和賞級の和平調停により、惑星“エーアデ”の平和が取り戻された結果、この『スパーマン』や『ホワイトフライデー』の隆盛に繋がり、全世界共通のヒーロー誕生となり、男女の協調協力の大切さや時に身を犠牲にしてでも相手の働きを援けるという分裂・分断から協調・連携のムーブメントを創りだしたばかりでなく、経済効果も今や莫大なものとなっている。また、私も念願だったベーノル平和賞の受賞も間近だろう。先頃、
思わぬ方向から交渉のカードが切ってこられた。かろうじて、昨日、「スパーマン劇場」を見ておいて良かった。「大統領、単刀直入に行きましょう。我々、地球の人類には時間がない。一体、いくらでコスモクリーナータイプEを地球にお譲りいただけるのですか?」
「嫌いじゃない。ビジネスにおいては、Time is Money.だ。では、こちらが優位で、かつ、現在、全世界からかつてないほど、我々が有する「中精子爆弾」は我が惑星世界にとって必要であり、また、我らが精子の社会における価値は現在、最高潮にある、というところは貴君も理解している前提で話を進めよう。それを融通しようというであるから、1000億コスモオイロ!と行きたいところであるがな、Mr.Aoyama。今週は『ホワイトフライデー』の特別期間中でもあるから、50%オフの500億コスモオイロもまけといてやろう。これ以上はビタ一文値引きするつもりはない。もし、これでは買えないというのであれば、他をあたってくれ。まぁ、あたるところが他にあればの話だがな。」
「500億コスモオイロ!!そんな高すぎる、絶対に出せない。」
「じゃあ、お引き取り願おうか。特別に宇宙戦艦ムサシの港停泊料金とホテル等宿泊費は特別に免除しておいてやる。では、また、会おう、Mr.Aoyama。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。腹蔵なく話をすれば、今回はキャッシュは100億コスモオイロしかないんだ。だから、500億コスモオイロと言われても払えない。」
そこに、話に割って入ってきた人間がいた。昨日、「スパーマン劇場」に登場していたOld February Milletだ。今日は
「心配御無用、大丈夫です。量子テレポーテーションを用いた電子マネーで残金を送金いただければ、それで大丈夫です。先日、量子力学宇宙秘密会議でご一緒した
「いや、ちょっとまて、Ms.Old February。彼らは、耐熱防御シールドゴムもご入り用と聞いている。その分の500億コスモオイロ分も一度に請求書に交ぜてあげた方が手間が省けるというものだろう?」と
「それでは、結局、込み込みで1000億コスモオイロではないですか!?」
「いや、僕はベーノル平和賞を間もなく獲らんとする平和主義者でね。振込手数料の10%かかる100億コスモオイロは当方持ちだよ。耐熱防御シールドゴムがなければ、コスモクリーナータイプEはまるで役に立たない代物になるぞ。それで良いなら良いが。」
頭がクラクラしてきたが、地球の値段を量りにかけられては、極めて立場が弱い。また、こちらには時間がない。折れるしかなかった。
「分かりました。地球を救わなければいけませんので、それでは、コスモクリーナータイプEと耐熱防御シールドゴムと両方で1000億コスモオイロで当方に譲ってください。どうかよろしくお願いいたします。」
「感謝も感じられた。よし、Mr.Aoyama、ディールだ。」
Ms.Old Februaryから
かくして、初取引ながら、1000億コスモオイロというとてつもなく、まさに宇宙的規模の取引は成立した。これが詐欺だったらどう責任を取ろうかとも思ったが、この賭けが失敗すれば、どの道、地球に住む人類は滅亡してしまうのだ。ここは、この賭けに願いの全てを託すより他なかった。
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