5-2 アイコン

 クロウ少佐が辞去し、豪華なスイートルームに一人取り残されたオースティンバーグ博士は、部屋の中を改めて観察してみた。

 監視カメラがあると少佐は言っていたが、ざっと見渡した限りでは、カメラの存在は確認できなかった。巧妙に隠しているに違いない。センサーも同じだ、恐らく壁に埋め込まれているのだろう。

 デスクの上には、博士がペンタゴンに連れて来られた際にもってきたバッグが置いてあった。なかにはいつも使っているコンピュータパッドが入っているのみだ。とりあえずやることがないので、博士はパッドを起動した。3段階の認証を済ませ、起動が完了するまでの間に、博士は冷蔵庫からペリエを1本拝借し、グラスに注いだ。

<あとで料金を請求されるなんてことはないだろうな>

 博士はふと思った。


 パッドが起動し終わると、いつもの画面が表示された。いくつかのアプリケーションと書きかけの論文のファイルなどがランダムに並んでいる。博士はこれらをフォルダに整理するのが苦手なので、もうすぐ画面を埋め尽くす。

<取り急ぎやることはなさそうだから、アイコンを整理してみるか>

 博士はそう思い立った。

 しかし、博士の手はすぐに止まった。

<なんだ、このアイコン>

 20個以上あるアイコンの中に、見慣れないものが1つあった。渦巻をイラスト化したデザインにみえた。しかし、博士はすぐに、それが渦巻き銀河のイラストであることに気付いた。

<ペンタゴンが仕組んだのか>

 博士は自問した。

<だが、それならクロウ少佐が説明するはずだ。そもそも私のコンピュータパッドは3段階認証でガードが堅い。いくらペンタゴンでも解読にはそれなりの時間が必要になるはず。そんなことに手間をかける理由はない。私に聞けばいいだけだ。とすれば、誰が…>

 博士は好奇心を抑えきれず、そのアイコンをクリックした。

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