続・ずりずり読める奇妙な話・怖い話

連野純也

season1(1~20話)

1.後ろにいる

 なあ、あんた。ちょっと思い出してみてくれよ。

 他に誰もいない夜の帰り道なのに、なぜか後ろから見られている──なんて気がすることはなかったかい?

 もちろん、振り返ったところで誰もいない。昔の人なら妖怪のせいにするところさ──べとべとさんとか。あれは足音がするんだったかな?

 妖怪のことはさておいて、原始人のころの恐怖はあるんだろう。肉食獣に背後から襲われたら対処なんて無理だからさ。見ることができない<背後に対する恐怖>は人間にはおなじみのもんだ。


 ただ、見られている、ということはあるんだな。いわゆる背後霊というやつ。

 ほら見ろよ、あのぞろぞろ霊を引き連れている子。たまにいるよ。本人は別に霊感があるわけでもないのに。見られている感じ──はするんだろうなあ。


 なんだ、あんたもあの子にきたいっていうのか? やめとけ、もう十九人はいるぞ。それだけ多いとたいしてちょっかいはかけられないし。それよりもあちらの子はまだ三人。守護霊様もあまり口やかましくないタイプだ。俺のおすすめ。

 兄さんはやけに詳しいなって? そりゃそうだ。

 俺は霊のダフ屋さ。<マッチング屋>のほうが今っぽいかな?

 俺に任せてくれれば、できるだけ希望の子に憑けるように配慮はする。そのかわり当然タダじゃあないぜ。



 あんた、くらいは持ってるんだろ?


 


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