第7話 アプリ開発は順調?
「テストの結果は順調です。スクショや共有機能ブロックが機能していたので、法務部を説得出来るかと思います。いかがでしょうか?」
「でかした。後は一部店舗でお客様を交えたテストをして反応をみてみようか。とりあえずママ……いや、社長にも報告入れとくよ」
「はい! よろしくお願いします。高宮店長」
隣にいる怜先輩と、私は顔を見合わせる。
昨夜の、あのぬくもり。まだ覚えてる。
でも仕事中だし、気にしちゃダメだ。
「どうした?ふたりとも嬉しそうだな」
「「ど、どういう意味ですか!」」
焦った声が揃って、店長が口元をニヤリとさせる。
「いや、アプリ開発が順調になって嬉しそうかなって意味だが、それ以外何かあるのか?」
先輩と私は、同時に肩をビクッとさせた。
「い、いえ!それ以外は!」
「そ、そうです!」
「ふーん。まぁいいけどな。……でもさ、素直になっても良いんじゃないか?うちの妻。いや、社長から『唐変木』って言われる俺でも、お前ら見てりゃ分かるよ」
「……!」
私と先輩は、無言で顔を見合わせる。
ドキドキが止まらない。
「ま、今回のアプリ開発で盗撮問題が少しでも解決出来たら良いね、桐生さん。よろしくお願いします」
「……はい」
「それと、一ノ瀬」
「え?」
「順調そうで何よりだが、油断するなよ。一部店舗テストでクレームでも入れば、全部パーだからな」
「はい!」
「でも、ま、お前らなら大丈夫だろ。仕事も相性良いしな……恋もな」
「ちょっと店長!」
「う……」
顔が一気に熱くなる。
店長は最後に笑って、「ママと娘たちに怒られねぇよう、俺も頑張るわ。ここからが正念場だ」と手を振って去っていった。
店長のガッチリした大きな背中を見送りながら、私は思った。
……どうしよう。やっぱり、好きかも。先輩の事が。
「……やっぱり、私たち相性が良いかもね」
「そうですね、先輩。……明日の仕事終わりにもしもお時間ありましたら、うちのお店に来てくれませんか?私の大切なお客様として」
私は勇気を振り絞って先輩を誘う。
「そうね、良いわ。既にアプリインストールしてるけど……。私とカップル登録してくれる?」
「え?!」
また、私の胸に針が刺さるような刺激が襲ってくる。
「いや、あの……。貴方のお店って普通のランジェリーショップより高いでしょ?ほら、カップル登録すると何割か安くなるし……。貴方も助かるんじゃない?」
「い、良いですよ!」
「パパ。店員の事を大切にするのは良いし、だからこそパパと結婚したけど、優しすぎじゃないの?」
壁の向こうで、社長らしき女性の声が聞こえて我に返った。
「ダメですよ、盗み聞きなんて……」
「だって気になるじゃん。……あ、声大きい、バレる!」
「先輩こそ、近づきすぎです!」
私たちは、声のする扉に耳を当てて、社長と店長の会話を聞いた。
「確かに『普通の試着室』と『アダルト対応試着室』を入口から完全別にする。『アダルト試着室は会員制・予約制・年齢確認必須のアイデアならお客様の要望に答えて管理しやすいのは分かった。元々、プレイ用も扱ってるから導入しやすい。でも、それだけじゃ解決した事にならないよね。パパ」
「はい、ママ」
「うちの公式アプリで年齢確認が必須だけど、あれって他のマッチングアプリみたいに年齢詐称しやすいじゃない。過去に中学生カップルが年齢詐称して盗撮プレイしてたのは覚えてるでしょ?」
「あぁ、あの時保護者から損害賠償請求されかけたけど、年齢詐称してるから無効ってうちの弁護士の説明で何とか収まった」
「でしょう?遊びじゃなくて本気で安全管理を考えないとダメだからね。今日は外部弁護士もいるからじっくりと話し合いましょう」
「分かった。今からふたりを呼び出そうか?」
「えっ……」
心臓が跳ねた。
ついに……来る。
「……行きましょう、先輩」
怜先輩も一瞬戸惑った顔を見せたけど、すぐに頷いた。
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