異能を隠して生きてきましたが、ダンジョンが現れたので存分に力を使ってみようと思います
雨の降り頻る
第1話:ダンジョン出現
突然だが、俺は異能を持っている。
どのような能力かというと、自分に対する攻撃?を吸収し、自らに宿るエネルギーとする、という能力だ。
え、よく分からないって? 大丈夫だ、俺もよく分かってない。
この力が分かったのは確か八年くらい前で、お爺ちゃんと公園で遊んでいた時に盛大にすっ転んで、その時に怪我をせず謎に体に力が漲ったのがきっかけだった。
その後も本当なら傷がついているような、怪我、事故…。それらが全てが無効化され、次の瞬間には、代わりに体がポカポカと暖まった。
そしてその体のポカポカを、エネルギーみたいなものに変換することができた。
このエネルギーみたいなものについては良く分かっていないのだが、体や物に纏わせたり、身体能力を少し上げたり、色々することができた。
相手の攻撃は効かず、その攻撃を自分のエネルギーとする。
まあ簡潔に表すと、異能系の漫画やらに出てくる攻撃無効系のとんでもチート能力だった訳だ。
じゃあ、これを使って無双ハーレムしよう…と思った時期が私にもありました…。
なんと刺激もクソもない超牧歌的平和な世の中だったのである。
せめてなんかさ、異能がなんちゃらとか、学園がなんちゃらとか、あれば良かったのだけど、現実は非情であったのだ。
まあ上手く使ったらこの力も使えるのかもしれないが、頭の悪い陰キャには少々きついものがあるよね。
え、そんな異能を持った俺は今何してるかって? まあ聞いてくれよ。
小学生の時はまあなんとか目立たないように普通に生きていた訳だが、中学生になって早めの厨二病が発症。異能で世界を制服するっ! なんてラノベ(聖書)片手で言っていた時代だ。
黒歴史というある種のタトゥーを脳に刻みつけてしまって、いつの間にか不登校になってた。
ありがたかったのが、俺を小さい頃から育ててきてくれたお爺ちゃんが優しかったこと。
「お前はお前の選択をしろ!」なんつってまあ不登校を許してくれたわけだ。
しかもちょっとお金があったようで、パソコンやらなんやらを買い与えてくれた。お爺ちゃん、それ悪影響しかないです。
一応中学は卒業できたものの、高校も怖くて一度も行けていない。そして現在、俺はネットという黒く濁った大海を彷徨っているというわけだ。
「はぁ〜人生どうしよう」
お爺ちゃんが買ってくれたパソコンを眺めながら、はぁと肘を机について溜息をつく。
「透っ!! 大変じゃ! 降りてこい!」
一階からお爺ちゃんの声が聞こえてくる。他にしていることもなかったので、重たい体を動かし階段を下っていく。
「どうしたのお爺ちゃん」
「世界が大変なことになっとるぞ」
リビングに入るとお爺ちゃんがテレビを喰らいつくように見ていた。お爺ちゃんはかなり大物というか精神が強いというか、年寄り特有の冷静さがある人だと思う。
そんなお爺ちゃんが焦っているというのは相当なことだ。なんだろう、好きな女優でも結婚したのかな。
『大変ですっ! あの大穴から沢山の化け物が出てきますっ!』
ヘリコプターで飛んでいるのだろうか、揺れる画面の中で鮮明に映し出されるのは、この世のものとは思えぬ「化け物」いわゆる「魔物」がうじゃうじゃと映っていた。
周りの風景は普通にビルが立ち並んでおり、その不気味さを際立たせている。
「ここにも来るかもしれんから、逃げる準備を——
冷静にお爺ちゃんは避難の準備を始めていたが、俺は少し動くことができていなかった。
テレビの中では警官が銃などを撃っているが効いている様子はない。自分の呼吸が少しずつ荒くなっていくのを感じる。
「透! 早く——」
なぜか周りの音は聞こえない。ただ、ドクドクという心臓の鼓動だけが耳に響いていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
あの事件から約四年が経った。自衛隊の活躍によって化け物的なのは倒されたらしく、その後世界各地で同じようなことが起きたという情報が入ってきた。
そしてその化け物たちが這い出てきた元凶の幾つかの穴を調査すると、巨大な空間が広がっていたらしい。まあここまで来ればバカでもわかる。所謂「ダンジョン」が誕生した、ということだ。
四年という月日は短いようで早く、一気にダンジョンの調査やら法整備やらが進んだ。
初めのうちはダンジョンは自衛隊だけでの調査を行なっていたが、集団戦があまり向いていないこと、銃火器類が効かないこと、アメリカなどでダンジョン攻略の民営化などが行われたことにより、日本も一般人によるダンジョン攻略が始まった。
ちなみにその時に作られた協会の名前が馬鹿みたいに長くて一時期ネットで話題になった。
ダンジョンへ潜るというのは、非常に危険な行為であることは分かりきったことだが、それを上回る「ドリーム」があるわけだ。
魔法を出す杖、伝説の魔剣、高価な宝物、そしてステータスによって得られる異次元の能力。
勿論それで犯罪をするだとかは認められていないが、魔法やらなんやらまあ男のロマンが詰まった力を得れる訳だ。
しかも、ダンジョンにある宝や素材を売れば石油王を超越した金持ちにもなれる。一攫千金、豪華絢爛、セレブ生活…。だがまあ、誰でも冒険者になれるというわけではない。
検査を行い一定数値のステータスがあったものだけがダンジョンに挑める、という形が冒険者になる方法だ。
それの検査が行われるのは一部の例外を除き、原則「18歳」になってから。ちなみに、今の俺の年齢は18歳。あとは分かるな?
「じゃあお爺ちゃん行ってきます」
「…本当に一人で行けるか? 隣のスーパーに行くのとは訳が違うんじゃぞ」
「多分、大丈夫」
掲げるマークはグッドマーク。正直不安だが、まあどうにかなるだろう。ネットで沢山予習したし。
「じゃあ、まあ気張ってこい!」
バンと背中を叩かれる。もうかなり年だというのに力強いが、それでも昔と比べると随分と優しくなった。
お世話になったお爺ちゃんに贅沢させるためにも、今まで宝の持ち腐れだった能力を使うためにも、頑張ろう。
「行ってきます!」
元気よくお爺ちゃんに挨拶すると、俺はドアを開け外の世界へと踏み出した。
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