第8話 私のお墓の前で泣かないでください。できれば笑って。
人を守る。その"守る"というのはどこまでを指すのだろうか。守ると護るの違いはなにか?一瞬だけか?それとも一生??
色々あるだろう。
しかし、1人の少年はそのようなことは何も感じなかった。ただ仇を討ち、人を助ける。それだけだ、それだけがすべてだった。昨日の夜ですべてが変わったのだ。
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翌朝である。
この日は青一つない雲空であった。本当なら晴れになって欲しいが、天気様には命令できない。
隼人(なんか、天気悪いな…。鳥が飛んでないから雨は降らなそうだけど…。)
だからといって雨が降らないとは限らない。天気様は気分屋だからだ。雲で太陽を食べ、いつの間にか消えてしまう、そんなもんだ。
『シーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン…………………………………………………………』
そして、この今の天気のように集落全体の空気は曇っていた。
隼人(なんだ、いつもより集落が盛り上がっていない?いつもなら狩りもいけないような常夏の海ぐらい青いガキたちが、走り回って遊んでいるんだけどな。)
閑古鳥が鳴きそうなこの雰囲気に何かがおかしいと、彼はそう踏んでいた。15年もこの土地に隼人は根付いていたのだ。気づかないわけがない。逆に気づかなかったら誰かが私に向かってシカの上腕骨を振り上げていただろう。(あり得るわけないが。)
隼人「父さん、少し出かけて来るね。」
父「ん?見回りの仕事か?」
隼人「……??まあ、そんな所。」
父「気をつけろよ…。動物には」
隼人「あ、ああ…?行ってくるよ。」
少し、腑に落ちないことがあったが、気にしないことにした。
隼人は少し歩いてみた。皆住居の中に入っていて何かコソコソ話をしている……?
隼人(なんだろうか………、気になってしまうが盗み聞きは良くないよな……。いや、やっぱこれは盗み聞きするわ。いや!するべきだ!気になって辛抱たまらん!)
人間気になったことは知ろうとする、それは仕方のないことだ。現代ではギリギリ犯罪になり得そうだが、今は縄文だ、心配することはない。そして、バレなければ罪ではない!!
音の泥棒である隼人は近くの住居に耳を当てた。もちろん、抜き足差し足忍び足で。この頃はまだ家に隙間がちらほらあるから、余裕で聞けた。それでは聞こう。
「なあ、昨日2人死んだことを知っているか?」
男が昨日あったことを妻に質問する。
「ええ、知ってますよ……獣に殺されたらしいですね。しかも1人は遺体がないということです。」
妻はちゃんと知っていたそうだ。
「喰われたな。」
「食われましたね。」
「可哀想に。我らも※祭事に参加したほうがよかったかねぇ。」
※現代で言う、供養や葬式の意味
「あの時は忙しかったですから…。」
「今度はちゃんと行こうか……。」
「はい…。」
隼人は話を整理し、考察した。どうやら昨日のことが知れ渡り、人々は不安に駆られているのだろう。
隼人「成る程な。取り敢えず別のところにも行くか。」
音の泥棒は一つの場所を攻略しただけでは満足しない。もっと知りたい欲求があるからだ。前の犯行と同じ手法でまだ盗み聞きだ……。
「副リーダーの言うことは本当なのか……?」
「知らんよ!」
「だよなぁ…。だって俺達あの時必死だったしなぁ…。」
「知らんよ!」
「本当ならめちゃくちゃ怖くないかぁ!?」
「知らんよ!」
「どうなんだ!!!??お前はどう思う!!?」
「やっぱり本当だと怖い、。」
「そこは知らんよと言えよ。」
粗方聞いた隼人。
隼人(何を言っているんだこいつら。)
あまりも滑稽+素っ頓狂な会話すぎて、整理出来なかった。
隼人「しかし、副リーダー…ユウリさんのことか。先輩の言ったことが広まっているらしい…。調べる価値がありそうだな。」
隼人は再び歩を進め、集落の奥へと進んでいった。
まだ、長は来ていない。だからその空いた時間で、調べようと。
隼人「ここは…」
見慣れた場所で、昨日もここへ来た。そう、墓地である。
隼人「ここへ来ると、少し……心にくるな…」
彼は昨日のことががまだ心に残っている。しかし、もう決めたのだ。
その時、遠くから何やら影が見えた。
隼人「ん〜〜?あの人は?」
墓地で誰かがいた。複数人いた、目に視える範囲で、2人、視えない範囲で大体2人だ。つまり4人である。
隼人「あの人…!」
そこへいたのは、
ユウリ「ん?ああ隼人か。どうしたんだ、ここへ来て、まさか俺らと同じでアユに会いにきたか?」
我らが副リーダーであるユウリだった。
隼人「ユウリ
キグレ「やぁ、隼人とぉ。いや〜〜……昨日はご愁傷さま(ひどかった日)だねぇ…。」
語尾は上がっているが、元気とは言えない感じであった。それはそうである。人が死んだのだからな。人があの世にいって喜ぶのはよっぽど恨みがあった人か、ただのクズか、さくらももこぐらいだろう。
そして、ユウリとキグレ以外にもここへ来ている人がいる。
隼人「そうですね、昨日は最悪な日でした。ン?あ!ミドリくんと先輩もいたんですね。」
ミドリ「※おはようございます先輩!!」
※縄文時代では挨拶は存在していたと考えられるが、どんな言葉かは分からない。だから、ここは現代語訳をしている。
ミドリは元気な挨拶をした。どうやらちゃんと立てていたいる隼人をみて、喜んでいるみたいだ。
隼人「ああ、おはよう。」
隼人は現代で言う『ういっす』のような感じで挨拶をした。そして、隼人はもう一人の方を見る。
隼人「カイレ先輩も来てたんですね。おはようございます。」
カイレ「おはようございます隼人くん。無事で何よりです。」
カイレは隼人が元気そうな姿をみて、安心しているそうだ。
隼人「はい。一応身体は元気です。」
隼人は何か含みのある言い方をした。皆はそれにきづいた。
ミドリ「身体は…ですか…。」
カイレ「ははは……、私もですよ…。」
ユウリ「おや?あんたもそうか。意外と気にしない人だと思っていたんだけどよ。」
副リーダーである彼はカイレに少し小声と言う。
カイレ「私をなんだと思っているのですか…?そんな人の心がないわけではありませんよぉ。」
キグレ「そうだよぉ!カイレくんは優しい人だよぉ!」
キグレはカイレを庇うように言った。
カイレ「ありがとうございます…。キグレさん。」
ユウリ「んー。リーダー言うなそうかもしれないな。」
彼はキグレが言ったらすぐに意見を変えた。
カイレ「……。」
ミドリ「ユウリさんって…リーダーに脳焼かれてません?」
ミドリは隼人にささやくように言った。
隼人「うん、確実に焼かれているね。それもウェルダンに。」
同じように隼人もささやいた。
カイレ「……これは重症ですね…。」
↑ユウリ「聞こえてるぞ、あとあんたらも」
うん、余裕で聞かれてたぁ。
ミドリ、隼人(聞かれてたぁ。)
ユウリ「………まあいい、こんなアユとフナさんにこの姿見られていたら、恥ずかしいにも程があるな…。」
ユウリは地面にいるアユを見ながら俯く。それもかなり暗い表情で。
カイレ「笑っているんじゃないですか、2人共…。」
ユウリが少し落ち込んでいるのを見て、カイレは気の利くように慰める。
ユウリ「ならいいんだけどな。……はぁ、くそ…。」
ユウリは地面にある、小石を蹴り皆からには背を向ける。
ユウリ「なりより一番残念なことは、フナさんの遺体がなかったことだ…。正確には内臓と骨ごと喰われて死体すら残らなかったと言ったほうが正しいが…。」
フナは熊に喰われてしまい、奴の血肉となっしまった。しかし、隼人とアユの2人がかりで倒せたがアユはその戦闘で亡くなってしまった。隼人に託すために。それが、昨日の出来事である。
隼人「すいません……流石に熊ごとには持って帰れませんでした…。アユさん1人で精一杯でした。」
隼人は申し訳なさそうに言い、あの時の光景を思い出してしまう。それにより、更に罪悪感を増幅さてしまう。しかし、ユウリの口からは
ユウリ「いや…隼人のせいではない。熊に対して勇猛果敢に立ち向かっていった。むしろ感謝しなければならない…。あの時、熊を倒してくれてありがとう。」
ユウリの口から出たのは感謝であった。隼人は感謝の言葉を言う副リーダーに少し動揺したが、大人しくその言葉を受け取った。
隼人「いえ、そんな、…ありがとうございます。そう言ってくれてうれしいです。……はは。なんかユウリさんに言われたらなんか、救われた気がする…。」
ユウリ「……そんな訳は無い。こんな俺の感謝なぞ、」
隼人「いえ、そんな訳有ります。」
彼はユウリの言葉を否定した。それは刃物のような強い言葉ではなく羽毛のような優しい言葉であった。
隼人「僕は、普通に嬉しいのですよ。天才である、副リーダーに感謝の気持ちを貰えるなんて、僕の心の中の誇りです。中途半端だと思った自分の行動も無駄では無かったと…そう思うのです。」
そのような言葉をかける隼人。背を向けていたユウリは夜のような暗い表情が、朝のような清々しい顔となっていた。
ユウリ「……そう、かもな。」
ユウリ「すまんな、隼人。」
隼人「いえいえ、こちらこそ。」
お互いは笑顔なった。
ミドリ「ふふ、2人揃ってとてもいい笑顔ですね。」
キグレ「そうだねぇ…。」
カイレ「……フッ…。」
その光景を傍で見ていた三人も笑顔となった。一件落着といったところか。
キグレ「あ、そうだ。ユウリィ〜、あの事を隼人に言う必要があるんじゃないのぉ?他の皆には言ったんだからさぁ。」
ユウリ「あ、そうでした。」
隼人「ん?なにかあるんですか?」
他の皆?あの事?何のことかと隼人は思う。
ユウリ「ああ、今日なにか変わったことはなかったか?」
彼は質問を隼人にキャッチボールくらいの速度でぶつけた。
隼人「え?えーと……」
そういえばと思う。道中この人ら以外人と会っていなく、皆住居に引きこもっていたこと。
隼人「あ!ありました。なんか皆室内にいますよね。」
ユウリ「そうだ、実は俺が熊のことを伝えて、今日は住居にずっといるよに伝えたんだ。今外に出ているのは…今ここにいる俺たちと、猟師部隊の一部、それと…兵士が外にいる。」
隼人「兵士?人専門の?」
ユウリ「ああそうだ。あいつらは交代して、見回りをしている。しかし、今日は6人全員いる。」
ミドリ「あれ?そんなに少なかったのですか?」
そう。ミドリの言う通りこれは少ない。なぜかというと、殆どの集落…いや昔の戦闘担当の場合は狩人(猟師)と兵士(軍人)と両立する場合が多く、専門でやる人が少なかった。逆にこの集落はかなり珍しい部類だと考えられる。この集落は人は少ない方だが、兵士6人は流石に少ない。
ミドリの質問に対し、ユウリは答える。
ユウリ「ああ、少ない。朝昼晩と2人ずつだからな。まあ、この集落は小さいからそれでもよかったのだが、流石に一気に6人いるのはおかしい。しかも、俺たちが、危ないと言っているのに外にでるのはおかしい。」
隼人「え?でも、集落を護る為だと言うなら…」
ユウリ「いや、はっきり言って猟師部隊が見回りしているからそんなに人はいらない。だから、室内に居てくれと言ったんだが……。」
隼人「聞かなかったと。」
ミドリ「そうだよぉ。『やるべきことがある!!』とか言ってね。」
今、猟師部隊の見回りは10人。
ユウリ「そして、俺達もその見回りの担当だ。」
その言葉に隼人は思い出す。
隼人「あ、だから父さんは見回りとか変なこと言ってたんだ。」ユウリ(変なことて……)
ユウリ「まあ、隼人の親御さんにも伝えたからね。本来あんたは担当しないはずなのだかな。」
隼人「そうなのですか?えっと、じゃあ帰った方がいいてますかね?」
ユウリ「う〜ん…。」
カイレ「まあ、危ないのでご自宅に帰られたほうがよろしいですね。」
キグレ「あとは私達に任せて。隼人は心の傷を治すのも大切だからね。」
ミドリ「俺、頑張ります!!」
↑隼人「おお頑張れ。」
ただ少し、懸念点が存在する。なぜ、このような状況に長は隼人を呼んだのだろうと。隼人はそれを疑問に思う。
隼人「でも、僕長に呼ばれていて…。」
キグレ「え?本当それぇ?」
彼女は少し不信感に思うように言う。それだけではない。彼女以外にもなにか不信がる表情を見せていた。信じていない訳では無い。ただこのような状況で呼ぶことがおかしいと感じている。
ユウリ「なにか…あるかもな…。」
カイレ「そうですね…。」
皆なにか裏があると見込んでいる。隼人以外の4人は少し考えた。なぜ、長は隼人を呼んだのかと。
すると、まずはじめに考えが終わったのかキグレは口を開く。
キグレ「隼人の後ろについて行っていい?」
隼人「え?なぜ急に。」
キグレはなにか考えがありそうだ。
キグレ「なにか隼人に危険があるかもしれない。今の状況は限りなく人に見えないから。」
ユウリ「そうですね。もし何かあったときに助けられる。もし、そうしたら……隼人。俺らがついてきていることは言うなよ。そうしたら、真相をつかめない。」
良くは分からないが、彼は自分のために護ろうとしてくれている。だったら…
隼人「分かりました。お願いします。」
頼んだ。
ユウリ「よし、それじゃあ……」
キグレ「行こうぅ!!!」
_______________________
集落の何処かで誰かが話していた。
??「準備はできたか?」
??「一応な…」
??「ちゃんとするぞ。」
??「ふっ……」
??「誰にもバレずにいけと言う命令だ。静かに行くぞ。」
??「かしこりました。」
その中のリーダーらしき人物が言った。
??「ウヌら、征くぞ…。」
それを言ったあと、目立たない声で取り巻きが声を出した。
「「「「「我ら……血に這う戦士なり…」」」」」
続く……。
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