第3話 ミス城之内



 ――文化祭翌々日のランチタイム。

 私は友達の佳奈となずなの三人で屋上に集まって円になり、みんな揃ってジュースを掲げた。


「えー、この度、我がクラスのマドンナ耶枝が、なんと2年連続でミス城之内に選ばれました! おめでとぉ~~っ!」

「やだぁ、我がクラスのマドンナなんて……」

「いいの、いいの。ささっ、カンパーイ!」

「カンパーイ!」

「2年連続優勝おめでとーーっ!!」


 2日前に校内開催のミスコンに2年連続優勝した。いまはそのお祝い中。


「すごいじゃん! 耶枝の言霊どおり、またミス城之内に選ばれるなんて」

「今年も選ばれるなんてビックリしたよ。キレイな人がいっぱいいたのに」

「耶枝ほどじゃないよ。ぶっちぎり優勝だったしね!」

「いやいやぁ、去年の結果を覚えてた人が投票してくれたんだって」

「なにいってんの。耶枝以上の美人はこの学校にいないし」

「そんなことないよぉ……。二人とも持ち上げすぎだって」


 オーバーだなぁと思いながらお弁当箱の蓋を開けると、なずなが横から覗き込む。


「うっわあぁ~!! 今日も耶枝のお弁当美味しそー。自分で作ったんでしょ?」

「うちには母親がいないからね」

「ごめーん……。その話を掘り起こすつもりじゃ……」

「いーの、いーの。両親が離婚したのは8年前のことだし、私はもう吹っ切れてるから」

「顔はミス城之内に選ばれるほどの美人で料理上手。通りで男が寄ってくるはずだわ」

「ほんとにやめてよ~。褒めてもなにも奢らないからね!」


 小学生の頃から家事をしていたおかげか、同年代では料理ができるほう。特に彩りにはこだわっていた。見栄えが良ければ父親が褒めてくれるから。


「耶枝は優勝したら勅使河原に告るって言ってたよね。ってことは、いよいよ……」

「うん! 告白は絶対に成功させて勅使河原くんの恋人になる!」

「出た出た、耶枝の”言霊”発動!」

「腰までのツヤツヤロングヘアー。お人形のような大きな目。スッと筋の通った鼻。そして、モデルのような形のいい唇。どの角度から見ても完璧な美少女が、地味な読書男とは釣り合わないと思うけどなぁ」

「ちょっとぉ。それひどくない? 勅使河原くんは見えない優しさが溢れてる人なの!」


 彼は人付き合いをしないからどんな人か知られていない。そのおかげもあってライバルはゼロ。そのぶん気持ちに余裕があるし、彼のいいところは私だけ知ってればいい。


「ごめんごめん。まぁ、女子が注目してるわけでもないし、ミス城之内が告ったらさすがに付き合ってくれるんじゃない?」

「ほ、ホントにそう思う?!」

「耶枝を断る男なんていたら相当変わり者だよ」

「そうかなぁ……。断られないといいけど」


 告白は成功すると言われてすっかりその気になっていた。

 2週間に一人以上告白してもらえるほど私はモテていたから。


 ――しかし、翌日。

 その過剰な期待が、新たな局面を迎えることになるなんて。

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