追放された無能王子、実は最強で覇道の道を征く

@erusaru

第1話 無能王子の烙印

王都の宮殿、その奥深くにある広間に、ひとりの少年が立たされていた。


 レオン・ディアルド。王国の第三王子でありながら、彼の立場は悲惨だった。


 「お前は王家の恥だ、レオン」


 王座に座る父、ディアルド国王の冷たい視線が、レオンを突き刺す。


 王国において、王族の価値は「魔法の才能」で決まる。長兄のアレクシス王子は炎の魔法の天才、次兄のグレイ王子は雷を操る俊英。しかし、レオンだけは魔法をまともに使えなかった。


 「……父上、私は努力を——」


 「黙れ! お前にはもう何の価値もない」


 父の言葉が広間に響いた。その瞬間、兄たちが笑みを浮かべる。


 「そうだな。王族でありながら、魔法もまともに使えない無能など必要ない」

 「むしろ、ここまで生かしてやっただけ感謝しろよ」


 アレクシスとグレイが並んでレオンを見下ろす。かつては兄弟として仲が良かったはずなのに、いつしか彼らはレオンを虐げるようになった。


 「レオン、お前に最後の情けを与えよう」


 国王が宣言する。


 「お前を、王国から追放する」


 その言葉に、広間の空気が凍った。


 「追放……?」


 「そうだ。お前は王族ではなくなる。この王都から、そしてこの国から出て行け」


 レオンの胸が強く締め付けられる。


 (なぜだ……努力しても認められないのか……?)


 しかし、彼に反論する権利などなかった。


レオンは何も持たされず、馬車で国境の荒野へと連れてこられた。護衛の騎士たちが無表情で彼を馬車から降ろす。


 「じゃあな、元王子様」


 騎士が皮肉げに笑いながら馬車を走らせ、レオンを置き去りにした。


 砂漠のような荒れ地が広がるこの場所には、人影すらない。


 (……俺は、本当に無能だったのか?)


 王都では何をやっても評価されなかった。だが、彼には確信があった。自分は、本当はもっと強くなれるはずだと。


 だが——


 「なっ……!」


 突如、レオンの背後で何かが動いた。


 振り返ると、そこには黒い毛皮をまとった巨大な狼——魔獣・ダークウルフが牙を剥いていた。


 「っ、クソッ……!」


 レオンは武器すら持っていない。逃げるしかない。しかし、荒野に隠れる場所などない。


 「ガルル……!」


 狼が跳躍し、鋭い牙がレオンの肩に食い込む——


 「ぐっ……!」


 痛みが体を貫く。血が大地に滴る。


 (俺は……ここで……死ぬのか……?)


 意識が遠のく。


 世界が暗闇に沈んでいく。


3.神との邂逅


 「目覚めよ——」


 どこかで、声がした。


 ふと目を開けると、レオンは白い空間にいた。そこには長い銀髪を持つ女性が立っていた。


 「あなたは……?」


 「私は【転生の女神】。あなたの魂を導く者です」


 女神は穏やかに微笑む。


 「あなたは不当な扱いを受け、そして無念のうちに命を落としました。しかし——」


 彼女が手をかざすと、レオンの体が光に包まれる。


 「あなたには、本来なら秘められた才能があったのです」


 レオンの心がざわめく。


 「……才能? 俺には魔法の力なんてなかったはずだ」


 「違います。あなたの魔力は王国の誰よりも強大でした。ただ、それが抑え込まれていたのです」


 女神の言葉に、レオンは息を呑んだ。


 「もし、もう一度人生をやり直せるとしたら——あなたは何を望みますか?」


 レオンは拳を握りしめ、迷わず答えた。


 「俺は……力が欲しい」


 「なぜ?」


 「もう二度と、誰にも見下されたくないから」


 その言葉に、女神は満足そうに頷いた。


 「では——新たな世界へ行きなさい。あなたの真の力とともに」


 光が溢れる。


 次の瞬間、レオンは異世界の大地に立っていた——。

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