第18話 夜の探検
ある夜の事。
「ねぇ美久、少し抜け出さない?」
「えっ」
「夜の探検!」
輝はいたずらっ子のようににやりと笑った。
弟にいたずらされることはあるが、自分からはしてこなかった美久は少しワクワクした。
その顔を見て輝は誘う。
「じゃ行こ!」
しかしどうやって抜け出すのだろうか? 扉の前には護衛がいる。
と美久が思ったのも束の間。輝は窓を開け放った。
「えっ?」
風が窓から入り美久の髪が揺れた。
美久の顔が引きつる。
「まさか……」
輝が美久の手を掴む。
「大丈夫! 信じて! 練習したんだから」
握った手に力が籠められる。
頷き、窓に足をかける。
「それっ」
飛び降りた。風を一身に受け髪が逆立つ。
「うわあああっ!」
地面が見え恐怖が迫る。体が急に浮く。そのままふわりと速度が落ち、地面に着地した。
「うわぁぁすごい……」
輝を信じたとはいえ窓から飛び降りたのだ。死ぬかと思い心臓が跳び出そうだ。
「風魔法で受け止めたんだ~」
「風魔法使えるようになったんだ……」
「フフッ、びっくりしたでしょ」
「死ぬかと思った……」
衛兵を避けつつ夜の城を散策する。空は星が良く見え、風が心地いい。
部屋をこっそりと抜け出すという、怒られてもしょうがない状況だ。背徳感にソワソワと楽しくなってくる。
歩いていると庭の端に何か箱のようなものが見えた。
近づいてみると檻の中に小さな黒い犬がいた。
額の部分に小さな角が生えている。異世界の犬は角が生えているのか?
角が生えていても黒くまん丸な瞳でこちらを見つめる姿は愛らしく小さい命そのものだ。
「「かわいい~」」
二人の声がシンクロする。
「美久、犬好きだもんね」
「ん? 可愛いと思うけど私猫派だよ?」
「あれ? 違うの? おかしいな……」
輝は首をかしげていた。
犬はぽてぽてと歩く。その姿を見て輝が言う。
「可愛い~! 名前をつけてあげよう。クロとかいいかな」
「そのままじゃん。シンプルで良いんじゃない?」
「クロ~可愛いね」
「ワン!」
クロは人懐っこく、上機嫌だ。
「フフッ可愛い」
クロも可愛いが、クロと戯れる輝だって可愛い。ほっこりする。
少ししてクロは座り込み、こちらを見なくなった。
「あれ? 眠くなっちゃったのかな?」
「夜遅いしね。私たちも帰ろっか」
「うん」
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