第3話:美女がバイトにやって来た
「みんな紹介する。このカフェの店長、
父の言葉に三人が振り向いて、俺に顔を向けた。
それぞれタイプは異なるが、三人とも驚くほど可愛い女の子たちだった。
そして──見覚えがあった。
「トップ3美女……?」
げえぇぇぇっ、マジかっ!?
フランス人とのハーフで、ブロンド色の髪が目立つ
知的で大人っぽいクール美女の
清楚で控えめなロリ系美少女、
しかも全員メイド服のようなウェイトレス衣装で、抜群の美少女が三人並んでいるさまは、そりゃもう圧巻だった。
それにしても、なんで彼女たちがこの店に?
俺は親父の腕を引いて、女子達から少し距離を取って小声で話した。
「親父よ。三人もバイトが来るなんて聞いてないんだが?」
「一人でも三人でも変わらないだろ」
「変わるわ!」
こんな美人とは、例え相手が一人でも緊張しまくって、まともに接することができない。
それが三倍の破壊力だぞ。まともにコミュケーション取れるはずがない。
「すごく可愛い女の子だし、雄飛も嬉しいだろ。衣装も急いで取り揃えたんだぞ」
メイド服のような衣装はあんたの
この変態親父の息子だとクラスの美人女子に知られたら、俺は明日からどういう顔をして教室で生きて行けばいいのか。教えてくれ親父よ。
「まったく嬉しくないぞ」
「オーッまいがっ、嘘だろ?」
「ホントだよ」
彼女達がめちゃくちゃ可愛いのは認める。
普通ならそんな美人と一緒に働けるのは嬉しいはずだ。
だけど今の俺には嬉しさなんて皆無だ。
いつも周りからちやほやされている女子達が、客をもてなす仕事をちゃんとできるのか?
話しかけることすら畏れ多い高嶺の花に、俺は店長としてちゃんと仕事の指示をできるのか? いや無理だろ。
それに何より、カーストトップの彼女たちからしたら、地味で平凡なクラスメイトがバイト先の上司だなんて、きっと嫌に決まってる。
メイド服を着て、同じクラスの男子の指示に従わなきゃいけないバ先だなんて、俺ならゾッとする。
つまりどの角度から考えても、彼女たちがこのカフェでバイトするメリットがない。
やっぱり俺と親父と二人で地道に店をしていくのが一番だ。
よし断ろう。きっぱりと断ろう。
そう考えて、トップ3美女の元に近づいた。
「店長さん、よろしくお願いしますっ!」
普段空気のような存在だから、幸い彼女たちは俺を同級生だと気づいていない様子だ。
それならなおさら断わりやすい。よし!
「皆さん、ご苦労様でした。気をつけてお帰りください」
「は? 何を言ってるの?」
美女たち相手にどう断わったらいいのか、緊張しすぎて変な言い方になってしまった。
そりゃさすがに怒るのもわかる。めっちゃごめん。
「ええーっ、あたし達、早速クビぃぃぃっ!?」
浜風さんがムンクのように叫ぶ。
「クビというか、できれば辞めていただきたいというか……」
「そ、そんな……」
真面目な京乃さんに悲しい顔をさせて心がチクリと痛む。
だけど仕方ない。いずれ俺がクラスメイトだと気づけば、どっちにしたって彼女たちはここで働くのを嫌だと思うはずだ。
三人が俺に気づく前に早く帰ってもらおう。
その方が、彼女たちもクラスメイトにメイド服姿を見られたという羞恥に気づかずに済む。
「おいおい雄飛、何言ってんだ。彼女たちが可哀そうだろ」
黙れ親父。勝手に彼女たちを雇ったのはあなたでしょ。
大方可愛い女子達に目がくらんで、雇う予定のなかったバイトをつい雇ってしまったってところか。
そんな適当な採用をするなんて、それはそれで彼女たちが可哀そうだろ。
なのでとりま親父はスルーする。
「えっと、みなさん。お帰りはあちら……」
「そんなことを言わないでください秋月さん」
「え?」
バレた。バレたぞ。
同じクラスの俺だってわからないと思って、お帰りはあちらなんて言ったのに。
いきなり
それに、普段話すことのない俺の顔と名前が一致することにびっくりだ。
「あれれっ? ……店長さんって、もしかして同じクラスの秋月くん?」
くっきり二重の大きな目で、浜風さんが俺の顔をじっと見つめる。
間近で見るとさすがにめちゃくちゃ可愛い。
「あ、ああ。そそ、そうだけど」
嘘をつくわけにはいかない。こうなったら正直に答えるしかなかった。
だけど俺がクラスメイトだとわかって、彼女たちはどう思うか。
恥ずかしがって、いきなり「帰る」って言いだすかもな。
「やっぱそうだよね! 普段と服装も髪型も違うからわかんなかったよ」
あれっ? なんだか普通なやり取りだな。
それにしても、確かに服装も髪型もいつもと違うのに、浜風さんは俺が同じクラスだとすぐにわかったのか。
いやそれより、最初に俺だと気づいた京乃さんはすごいな。
もしかして俺って、案外女子達に知られているのか?
──なんて思っていたら。
「誰?」
整った大人っぽい雰囲気で、この人も相当美しい。
ついこの前、ニアミスしたことを思い出した。
目を細めて俺を睨む神ヶ崎。
いろんな意味でドキドキした。
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