煙の中
第13話
それからしばらくの間、彼女を見かけることはなかった。
結局名前も知らないままなわけだし、二度と会えなくなることぐらい想定していたつもりだったけれど、ぽっかり開いた心の穴は思った以上に大きかった。
ひとりで揺られる電車も昔は好きだったはずなのに
どこか物足りなくて寂しい感じがする。
いつものように推理小説を読んでも、頭はすぐに別のところへ行った。
それを連れ戻しては、また迷子になって、
そんなことを繰り返しているうちに最寄駅につくような
あまりにも情けない日々だった。
あの人が口にする『こんにちは』を待ち望んでいた。
期待すればするほど、現実はうまくいかない。
顔が見たくても手がかりがひとつもないことを知って
初めて、彼女が自分の話をしなかった理由が分かった気がした。
彼女の中の僕は最初から最後まできっと、
いつだって都合よく切り捨てられる"友達未満"だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます