オンガク
第1話
_______別に、好きじゃない。
「Bのフィルイン、もーちょい硬く刻めない?」
「ん、りょーかい」
扉を開けるのを躊躇う癖が付いた。
部屋に響き渡るドラムの音。
歪んだギター。
その強い振動で
嫌でも身体の中に流れ込んでくる。
「!あ、もう来てたんだ。」
「いつもの部屋いるから。」
「おー後で行く」
ロックなんて好きじゃない。
軽音楽を好きだと思ったこと、一度だってない。
それよりも吹奏楽とかオーケストラとか
古典的なものの方がうんと好き。
実際、音楽の原点はそこにあるわけだし。
繋いだ視線を切って
ひとり、踏み込んだ部屋は
扉を閉めると流れる空気が止まった。
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